―わたし好みの新刊― 

 200811

えほん日本国憲法』    野村まり子絵・文  明石書店

 さし絵入りで見やすく編集された憲法の絵本である。〈社会の基本的な
原理を知る〉という意味で,科学の本ととらえたい。

 めまぐるしい日常生活の中では法律や経済が目の前にはだかって,憲法
などというものは遠い存在に感じてしまう。しかし,わたしたちには,人と
して生きる権利を保証したかけがいのない日本国憲法がある。その日本国憲
法を手はなすことがないように、「これからおとなになる人に、また、憲法
とは何なのかをたしかめてみたいおとなの人に、読んでいただけたらと思い
ます。」と著者は綴っている。

 項目を並べていくと,「さまざまなくらし」「わたしのことはわたしが決
める」「心は自由」「考えたことを伝えたい」と続く。そして「教育への権
利」。ここでは,フリー・スクールや自宅での学習,夜間中学,外国人学校
などの絵も書かれており,「国には、必要な学びを、必要とする人たちに提
供する義務があります」と解説している。卒業式の絵は対面式になっている。

 次は「生きることは権利」「いやなことはいやと言える」「みんなが平等
に持っている人権」「「国のやりくり」へと続く。過去の暗い時代の事例を
紹介した後,戦後の「新しい憲法」の誕生になる。日本国憲法下での「憲法
のちから」が再認識できる。

 最後の解説欄で著者は,法律に勝る〈自然の法〉の話,立憲主義の話もある。
「しあわせに生きるための道具」と位置づけた憲法の本である。  
                       
2008,09   1,600

『大きな数でわるわり算』 まついのりこ・松井幹夫著 偕成社
 松井さんの〈算数たんけんシリーズ〉の一冊である。今回は,子どもたち
にはちょっと抵抗感の出てくる〈大きな数のわり算〉の仕方を解説している。
小学校などの現場では,かなり知られている「タイル方式」をもとに,独自
の工夫として〈片手かくし〉〈両手かくし〉などの手法を取り入れて絵本に
している。まついのりこさんの楽しそうな絵が,子どもたちを楽しい算数の
世界へ導くのではないか。

 まずは,一桁の数で割るわり算の復習から。ここで,タイルの意味も復習
する。いよいよ「大きな数でわる わり算」の星に到着。最初は 
60÷20
案内である。

 わり算先生が 胸につけていた宝ものを手に持って,ふしぎなわり算箱2
箱(
20区分)が出てくる。そこに,10個を一本にしたタイルが分けられる。
このようにして,まずは数量のイメージやわることの意味を作った後,筆算
に入っている。

 筆算では〈たてる〉〈かける〉〈ひく〉〈おろす〉を一つのパターンとし
て使っている。わり算で数を見つけにくいのが,答えになる数の最初の位で
ある。これを〈片手かくし〉〈両手かくし〉の技法でしていく。

 いくら,絵で興味深く描かれているとしても,子どもだけではすぐには中
味に入り込めないだろう。保護者の方も一緒になって読み進めて行くにはい
いヒントになっている。
  
                      
2008,09版 1,600 
 
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