―わたし好みの新刊― 

        200812

『山に木を植えました』   スギヤマカナヨ作  講談社

 この話のもとは、
20年前に始まった漁師さんたちの森作りだ。気仙沼の
カキ養殖漁師さんが、カキの不作を疑問に思って調べていくうちに、海藻
の栄養源になる鉄分が少なくなっていることをつきとめた。海藻が取り込
みやすい鉄分(フルボ酸鉄)を増やすには、湾に流れ込む河川の森を広葉
樹の森にすることだ。そのことに気づいた漁師さんたちが、山に植樹して
森づくりを始めた。やがて、海にはプランクトンが増え、カキも元気をと
りもどした。この内容を、小さな子どもにも読めるように絵本化されたの
が本書だ。

 本書では、植樹から、広葉樹の森が大きくなり、腐葉土が生まれ、森の
生きものが元気になり、川の生きものも元気になり、海のプランクトンが
よく育ち、魚たちも増えていく自然界の連鎖を、分かりやすい絵で描いて
いる。

 「フルボ酸と鉄は、であうとすぐになかよくなり、くっついて、フル
  ボ酸鉄になります。」

 「(海そうや植物プランクトンは)ざんねんながら、じぶんだけでは、
   そのえいようを とりこむことができません。
  それを手だすけしてくれるのが、とおくの山から はるばるやって
  きた
フルボ酸鉄なのです。」
難しい場面をさらりと書いている。子どもにはこれでイメージができればい
いのかな。

 折り込みの工夫をしたり、重ね見できるページを作ったり、見やすい絵
本である。

                             
2008,05   1,300

『花火のえほん』       冴木一馬作  あすなろ書房
 夜空に大きく打ち上げられる本格的な大花火の絵本である。作者は、花火
師(ハナビスト)という花火の研究家だ。花火の作り方や、花火の種類、打
ち上げ方など、あまり知られていない花火の世界をのぞかせてくれる。

 はじめは「花火の作り方」。あの大きな花火玉の中は、なんと小さな火薬
の粒がぎっしり詰められている。夜空で大きく花火が飛び散るのは、こうし
た小さい火薬がつまっているからだ。

 つづいて、「花火の打ちあげ方」がある。あの大きな玉を空高くどうやっ
て安全に打ち上げているのだろうか。筒の下に打ち上げ用の火薬が敷かれて
いて、引火すると大砲の弾のように飛び出していくしかけだ。大きい物にな
ると、なんと
600mの高さにまで上がっているのだという。
 あとは、さまざまな種類の花火の紹介である。次々と美しい写真が続く。
「菊」や「牡丹」「椰子」など、植物の花に似せたものや、「ポカ物」とい
う流れ花火のような形もある。「雷」「千輪」「万華鏡」など音のはでな花
火もある。なかには「ちょうやとんぼ、土星、ひまわり」など、絵や文字を
浮かび上がせる花火もある。「しかけ花火」や「水中花火」「スターマイン」
といった豪華版もある。最後に書かれている「日本各地の名物花火」もぜひ
見に行きたい。美しい花火の集大成本だ。

                        
2008,07  1,200円(西村寿雄)
 
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