―わたし好みの新刊― 

    200905

『くうきは どこに?』
    フランクリン・
M・ブランリーさく 大西健夫他訳 福音館書店

 著者の本は,「宇宙たんけんたい」シリーズ『太陽系の惑星』(小峰書店)
などが日本にも紹介されている。わかりよい端的な表現で語りかけていると
定評がある。
アメリカ自然博物館の館長などを務め,児童向けの著作も多い。

 「くうき」は子どもたちが生まれてまずふれる自然の〈物質〉である。し
かし,日常的にはその存在に気がつかない。あまりにも日常的すぎるからで
ある。科学の第一歩は日常的な自然への問いかけにある。

この本は,空気の存在について意識するキッカケを与えてくれる本である。
 
まず,「きみのまわりには、くうきが ある。/ふかい たにのそこ、た
かいやまのうえ/どこに いっても、くうきは ある。」
として,人間が
日の光をあび楽しそうに生活している絵が描かれている。風船がふくらむのも,
木の葉が舞い降りるのも空気のおかげ,メリーゴーランドや風によって空気を
感じることが出来る。
 そのような絵が続いた後に
「コップのそこにティッシュをつめ,水の入ったボウルの中に,逆さまに入
 れると…」
 空気と水の実験の紹介である。いくつかの実験で,物質としての空気を感じ
ることが出来る。つづいて,空気の重さや,宇宙や水中の話へと続く。水の中
にとけている空気を見ることも出来る。

 空気にまつわる広範囲な話が,楽しそうな絵と共に展開されている。すてき
な科学入門書である。                    
                         
20093月 1,300

『けんじいさんのたんぼ』(おおきなポケット) 瀧沢郁雄文 福音館書店           「かがくとおはなし」として,稲田と水の関係をアカガエルの視点を
通して物語風に語っている。小さな子どもたちにも読んで聞かせたい物語であ
る。

 各地で耕作放棄の棚田が目立つようになったこの頃であるが,水田として使
われている田んぼでも,水が入るのはふつう
5月の田植え時期である。秋の収穫
を終えた時から,次年の田植え時期まで,田んぼは乾燥化した更地となっている。
その間,さまざまな雑草の種子が田んぼに飛んでくる。そして,苗代の頃田に水
を入れると,田んぼの雑草が一斉に芽を吹き出す。そこで,農薬を使って雑草の
発芽を押さえているのが現状である。 

 ところが,早春の頃から田んぼに水をはっている農家がある。けんじいさんの
田んぼである。けんじいさんは,早春のぬくもりが感じられる頃になると,もう
代かきをしてたんぼに水をはる。そうすると,飛翔してきた雑草の種も発芽でき
ず,田植え時でも,雑草はほとんど生えないのだという。したがって,農薬の使
用もほとんどいらない。

 これがまた,早春に卵を生むアカガエルの水辺環境にも適している。アカガエ
ルの生きる水辺がどんどん破壊されている今,水をはった田んぼはアカガエルに
とってどれほどありがたいことか。

 この本は,けんじいさんの田んぼに水が入るのを待ちわびているアカガエルの
会話を中心に,水環境の大切さを語り伝えている。  
                             
2009,05  770
               

             
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