―わたし好みの新刊― 

          200908

野の花えほん』(春と夏のえほん)  前田まゆみ作   あすなろ書房

 春から夏の野草の一つ一つが12ページにうまくまとめられている。やさしい

絵と簡単な解説,似た種類の紹介,特徴などを付け加え,ときにはレシピ集を,

ときには遊び方など,種に応じて多様に紹介している。この種の本は類書もある

が,淡い色あいの絵が趣のある絵本に仕上げている。

 どんな話が書かれているのだろうか。一つ紹介してみよう。

〔はるじおん〕(春紫苑)キク科 多年草 背丈3060cm 開花期 46

   大正時代に、庭の花としてアメリカから日本に紹介されたものが、しだ

いに野生化し、今では全国で見られます。コンクリートの割れめや駐

車場のフェンスの……。

といった解説から始まる。さらに,〈はるじおんのなかま〉として、「ひめじょ

おん」「エリゲロン」の紹介があり,〈特徴をかんさつしましょう〉では「ひめ

じおん」と「はるじおん」の違いが,〈キク科の特徴〉も簡潔にまとめられてい

る。さらに〈名前の由来〉、〈薬にもなる、はるじおん〉などもある。

ハルジオンはアメリカ先住民の間では頭痛や風邪の薬として使われてきたとの

こと,アメリカ大陸ならではの歴史のあとがしのばれる。最後は〈はるじおんガ

ーデニング〉の案内がある。クローバーやパンジーなどと寄せ植えした素敵な花

鉢の出来上がりである。これだけの内容が2ページに収められている。

種類によっては、野草を食べるレシピ集もある。〔のびる〕の項では、クリーム

チーズやムカゴの酢漬け、酢みそあえ、ふくめ煮、など多様に紹介されている。

 所々に動物のイラストも交え、楽しくながめられる〈えほん〉である。

                          20094月 1,500

 

『野菜ふしぎ図鑑2』     稲垣栄洋著   健学社

 著者の稲垣さんは『キャベツにだって花が咲く』(光文社新書)など,身近な野菜

や雑草に関する著書を多く書いている。いずれも文章がやさしくて読みやすい。

 この『野菜ふしぎ図鑑』は〈図鑑〉とはいうものの,野菜に関するちょっとし

た豆知識がほどほどに紹介されている。この本の特徴は,絵や写真の多いビジュ

アルな前半と,補足的解説をした後半とに分けられていることである。小さな子

どもたちは前半部を読めばいい。また,ちょっと前半では物足りない高学年児童

や大人は後半部を読むと,さらに興味ある話に出あう。〈野菜ふしぎ〉のいくつ

かを紹介してみよう。

 「シイタケと飛行機の共通点は?」とある。さて,なんでしょう。シイタケの

形など今まで特段意識もしていなかったが,なるほどキノコはうまい形になって

いるものだ。この項に関する解説ページでは,シイタケのひだについても言及し

ている。胞子が飛び出しやすいようにひだもうまくできている。

「レンコンの穴は何のために?」という項もある。丈夫に育つためかと思ってい

たら,なかなか大切な働きがかくされている。葉の柄の部分にも太い穴が続いて

いる。なるほど,これでレンコンは泥の中にあっても新鮮な野菜でいられるのか

と感心させられる。

 本の合間にはちょっとしたミニ知識もちりばめられている。野菜の花と実がつ

ながるように,あみだくじ様式で書かれていたり,外国の土地から名前がついた

野菜が紹介されていたり,興味をそそられる話題が多い。 

        2009415日 1,200

 

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