―新刊案内 2009,12― 

    

『モグラ博士のモグラの話』
        川田伸一郎著  岩波ジュニア新書 
 岩波書店

新進気鋭の学者が書いた〈モグラ学入門〉といった本である。モグラ研究の現
段階での知識やモグラ研究のおもしろさなどが伝わってくる。

本の内容は,T「モグラ博士のモグラ紹介」,U「僕がモグラにハマるまで」,
V「世界のモグラを探しに」,W「モグラの体を調べつくせ!」,X「モグラの
来た道」という章立てとなっている。

T「モグラ博士のモグラ紹介」は,モグラについて親しみやすく書かれている。
ちょっとモグラのことを知りたいなと思う人にはちょうどいい。〈モグラはどん
な体をしているのか〉や〈モグラの土掘り道具〉などでモグラのかくれた全容が
分かってくる。さらに,〈モグラとキノコの不思議な関係〉とか〈モグラの恋愛〉
などと興味深い話も続く。モグラの研究では,まだまだ未知のことも多いという。
モグラがどのようにして出会いをして交尾をしているのかはまったくわかってい
ないと著者は書く。

モグラは農業者には厄介扱いされているが,意外と,昆虫を捕食したり土壌の循
環の手助けなど,生態系のバランス維持に役立っているとも書く。モグラの擁護も
忘れない。

動物学研究の実際や,モグラ学についてさらにくわしく知りたくなれば,U項以
下に読み進めばいい。まずは,T項を読めば,モグラと仲良しになれる。随所に問
いかけを入れながら,読みやすくまとめられている。 
   
                       
  20098月 780

 

『目で見る進化』 
      
 ロバート・ウィンストン著 相良倫子訳  さ・え・ら書房

さ・え・ら書房の〈目で見る〉シリーズの1冊である。かなりビジュアルで多く
の知識
がちりばめられている本である。写真ページが多く値段もはる。図書館や
学校で見る本
としてよいのかもしれない。

 この『目で見る進化』の初めは「答えを探し求めて…」という項である。紀元
前,人類
は自然現象に数々の瞑想を抱き,神秘的な解釈をしていたことが初めに
紹介されている。

 しかし,あとは1600年代に一足飛びである。なぜかギリシャ・ローマの科学と
長い中世の
沈黙の時代がぬけている。1700年代に入り〈進化論への序章〉が始まる。
〈化石の謎〉が
「ダーウィンの進化論」へと発展させていく過程が記されている。

次の「ダーウィンの進化論」の項ではかなりのページを割き,ダーウィンの全貌
が描か
れている。興味深いのは「目のふしぎ」だ。目の形が動物の進化の証しに
なっていている
という。ただし,人の目には〈盲点〉があり,タコが人よりも
〈さらに進化した目〉を持っているのだという。

 次の項は「遺伝学と進化」。染色体やDNA,ゲノムといった現代の話が出る。
遺伝子が
受け継がれていく過程には,自然選択のほかに環境に適した変異もある。
いまや,人類はその〈遺伝子操作〉も行う時代になった。最後の項「進化は続く」
では,〈生命の歴史〉がビジュアルに描かれている。いろいろ興味深い内容もあ
るが情報が盛りだくさんである。最後に「バイオテクノロジーを使って、自分た
ちの遺伝子を変えることもできるのだ。今後、人類は自らの手によって進化して
いくのだろうか」と結んでいる。人類はどんな道筋を歩むのだろうか。   
                        
20097月 2,800

            新刊案内 12月