―わたし好みの新刊― 

        201003

『雪の結晶ノート』  

マック・カッシーノ/ジョン・ネルソン作 千葉茂樹訳 あすなろ書房      

 だれしも,冬の空に舞う美しい雪の結晶にとりつかれることがある。そっと,

マフラーなどにくっついた六角形の結晶は,ほんとうに美しい。しかも,同じ形

のものは,一つとしてないというから不思議である。

 この本は,そうした雪の結晶の不思議な成り立ちについて読みやすく書かれて

いる。雪の夜,この本をひもときながら眺める雪も,また美しく見えるに違いな

い。

 「小さな小さな雪の結晶、なぜ、こんなに美しく、複雑なカタチをしているの

でしょう?水と空気の織り成す〈自然の芸術〉、その神秘に迫ります!」

と帯に書かれている。

 まずは、雪の結晶のなりたちから入る。「ちり」が雪の結晶の「しん」になっ

て、結晶は成長する。そして,雲の中を落ちながら、六角の針状の結晶は大きく

成長していく。雪の結晶には星印のものから、板状のもの、柱状のものといくつ

かのパターンがある。しかし,いずれも六角になっている。そのなぞは水分子の

配列による。

 そうした理屈は別として,美しい雪の結晶の絵がふんだんに描かれている。ペ

ージをめくっているだけで冬の夜も楽しめそうだ。

                                                200911月 1,200

 

 

『通学路の草花えほん』    大島加奈子著    PHP研究所
 本の題名のとおり,子どもたちの通学路を想定した草花えほんである。副題に
「四季をみつけよう」とある。小学2年生の女の子が,通学路でなにげなく目に
する目線で描かれている。普通の図鑑形式の絵本に比べて内容もあっさりしてい
る。余分な情報はほとんどない。小学生が普通に学校の行き帰りで四季を感じる
様子を描いた手頃な読み物である。
 まずは,春の帰り道。
   「あっ、ダンゴムシが 2ひきも いる!」

 こういうことも,子どもにとっては大発見である。

  「あっ、モンシロチョウ。タンポポに とまった。」

  「テントウムシ みっけ。アブラムシが いっぱい!」

と,なんだかうきうきする通学路だ。

 やがて,果物の木が植えられている「くだもの道」に出る。春には美しい花を

咲かせ,秋には甘酸っぱい実をつける〈わたしの大好きな道〉なのだ。やがて,

夏。いちだんと濃くなった「緑」を肌で感じながらの登下校だ。学校に珍しくザ

クロの木がある。夏には不思議な形の花をつける。秋になると,赤や黄色,色と

りどりの楽しい道に変身する。いろいろなドングリや木の葉拾いでなかなか前へ

進めない。

やがて,寒い冬がくる。しかし,冬はまた植物にとっては,新しい春の準備な

のだ。

と,こんなふうに四季おりおりの情景が描かれている。

子どもたちと共感できる絵本である。             

                       201002  1,470

                            
                  
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