―わたし好みの新刊― 

 

                          20106

『恐竜・大昔の生き物』

(新・ポケット版 学研の図鑑)真鍋真監修 学研教育出版

 「ポケット版 学研の図鑑」がリニューアルされている。このシリーズの『鉱物

・岩石』(旧版)なども,コンパクトによくまとまっていて私の愛用図書となって

いる。

 今回,増補改訂された『恐竜・大昔の生き物』も小さい本ながら,情報がいっ

ぱいつまっている。基本的には古生物全般を網羅しているが,〈恐竜〉には約半

数のページを割いている。最初に「地球の歴史と生物」の項があり,先カンブリ

ア時代から新生代までの生物の姿が概観できる。そして,「魚類」「両生類」

「爬虫類」「鳥類」「哺乳類」と,進化の順に解説されている。それぞれにくわ

しい系統樹がつけられている。

 その中でとりわけページを割いているのが爬虫類の中の恐竜である。恐竜につ

いては,研究もどんどん進み種類も多義に渡っているので,なかなか全容がつか

みにくいが,この本では適度にまとめられている。まず,「恐竜の骨格と分類」

という解説から入っている。恐竜研究はなんといっても化石が元になっているの

で,骨格に注目することが大切なポイントである。その点,この本は,多くの種

毎に骨格のさし絵がつけられていて,骨の特徴までこまかく文章で補足されてい

る。これで,「なるほど,こういう特長の骨があるのか」と納得できる。さらに,

姿の予想図にも,それぞれの目の付け所が文で補足されている。このような書き

方をしている本は他にないのではないか。 

 パラパラとページを繰るだけでも進化の状況が一目で見て楽しめる本である。

              20104月 960

 

『植物のふしぎ』(科学のおはなし)     萩原信介監修  PHP研究所 

 同名の本が1962年に別の著者名で出ている。偕成社刊で真船和夫さん著作の本

である。もともとあまり植物に関心がなかった私は,真船さんのこの本を読んで

ずいぶんと植物に目がいくようになった。最近になって,「同様の本が出るとい

いな」と思っていたら,まったく同名の読み物の本が出た。この本の監修者,萩

原信介さんは,国立科学博物館付属の自然教育園(品川区)で,かねてからいろ

いろな植物に関する楽しい研究をしておられるので期待して買い求めた一冊であ

る。

 内容としては「植物も、夜になるとねむるの?」「モヤシは、なぜ白っぽい色

をしているの?」「サボテンには、なぜ葉が生えないの?」「虫を食べる植物が

いるって本当?」「ミカンがクローンだって本当?」「レンコンには、どうして

あなが開いているの?」

など,30の話を各々4ページ仕立てで書いている。

「まっ白な花や黒い花がないって本当?」という項では,「〈まっ白な花〉や〈ま

っ黒な花〉はない」と書かれている。〈黒い花も見るのに〉と思って読んでいくと,

それはまっ黒ではないとか。色素と光の関係で,花の色もさまざまに見えるらしい。

このように,書かれてある内容には興味の持てる内容も含まれているが,挿し絵な

どを入れて4ページなので話のすすめ方が淡泊なのがおしい。ちょっとした空き時

間に,子どもたちに植物の話として読むには手頃な本かも知れない。

この本は,〈科学のおはなし〉シリーズとして出版社で編集された本とみられる。

萩原さんの文ではないようである。もし可能であれば,1962年の真船さんの本と読

み比べてみられるといい。科学読み物研究にはいい勉強になる。

    20104 月刊  1200円 

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