―わたし好みの新刊― 2010年8月
『身近な発明の話』(新総合読本5) 板倉聖宣著 仮説社
著者 板倉聖宣氏の本には,ほとんどに〈はじめに〉や〈あとがき〉がくわしく
書かれています。〈はじめに〉や〈あとがき〉を読むと,その本が出来てくる背景や
補足的な話が書かれていて,よりいっそう本に親しみが持てます。この本のタイトルは
『身近な発明の話』です。この本の〈はじめに〉にこのようなことが書かれています。
「身近な〈小発見/小発明〉の物語のほうが,〈大発見/大発明〉の物語よりもい
いことがあります。… 」と。どうしてでしょうか。著者は「身近な人がなし遂げた発
明や発見があると〈どうしてその人は,そんな発明や発見ができたのだろう〉と自然に
考えられます。そこで,その物語が一層生き生きとしてくるのです」と書いています。
この本では,その〈小発見〉や〈小発明〉物語が7点書かれています。
内容を見てみましょう。潜水コップで水の中にもぐったら/不思議な石,石灰岩/
石灰の日本史/コンニャク発明ものがたり/笑気の発明発見物語/世界最初の電
磁石/〈自動改札〉のなぞ,
とあります。潜水ベルのようなもので本当に潜水したのでしょうか。生きる石灰,消え
た石灰,しっくい,石灰石,など,どんな発明がつながっているのでしょう。猛毒の
コンニャクをどのようにして食べられるコンニャクに変えていったのでしょうか。「笑
気」ってなんでしょう。JRの「イコカ」とか「スイカ」とかのICカードは,どのよ
うな仕組みになっているのでしょう。興味のあるところから読めばいいでしょう。
「問題」があったりお話があったり,あっという間に読み終えてしまいます。
2010年4月 1,400円
『林の土から芽が出たよ』(土にねむるたねのふしぎ2)
松尾洋子写真 アリス館
〈土にねむるたねのふしぎ〉シリーズの一冊である。この本は〈林の土〉にひそむ
種に目を付けて,その生育を観察している図鑑である。写真が生きている。
最初は2月の雑木林の写真。落葉樹の森は,下に枯れ葉をいっぱい落として,
日の光を地面にまで届けている。この枯れ葉の下にはなにもないのだろうか。
いえいえ,
「春になると、かれ葉の間から/いろいろな植物が顔を出しました。
/タチツボスミレも、さいています。」
森は目を拭きだし若葉が目に着く頃となります。ここで,著者は森の土を少し
持ち帰り,自宅のプランターに植えてみます。なにか芽が出るでしょうか。まず
は,大きな種のどんぐり,根とは反対に上に向かって出てくる。そして,4月。
プランターのあちこちから,緑色の芽が吹き出してきた。「ドングリのほかは、
何も植えていないのに、どうして…?」と問いかける。どうしてだろう。その
答えが右ページにイラスト入りで示されている。なるほど,昨年の植物のたね
だったり鳥のしわざもある。いよいよ,本葉が出だす。なんといろいろな芽
生えがあるものだ。なかには,根から芽を出すものもいる。5月,6月プラ
ンターの植物がぐんぐん大きくなってくる。まだまだ観察は続く。
秋が近づくと「秋の花」も咲く。紅葉の季節を迎える。プランターも一人前
に葉を紅葉させる。こうして1年が過ぎ,また芽生えの春を迎える。プランタ
ーに野草の花々が可憐な姿を見せてくれる。
なんとも楽しい体験である。 2010年4月刊 2,000円
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