わたし好みの新刊―       201012

 

『ぎゅうにゅうだいへんしん!』(しぜんにタッチ)

 中山章子監修  ひさかたチャイルド 

  ひさかたチャイルド社は,『ファーブル昆虫記』(科学絵本ライブラリー),

『かばが がばー』(おおきなかがく)など,以前からすぐれた幼少児向けの科

学絵本を出版されている。この〈しぜんにタッチ〉シリーズでは『にんじゃ あ

まがえる』,『やさいは いきている』などがすでに出版されている。この「科

学絵本」というジャンルは,すでに明治の中頃から生まれている。幼少児にもて

いねいにわかりやすく科学の不思議さを伝えようとする試みである。

 さて,この『ぎゅうにゅうだいへんしん!』だが,まず最初に「ぎゅうにゅう

って、なんだか しってる?」と問いかける。多くの幼少児にとっては,牛乳は知

るも知らないもない,毎日飲んでいる牛乳である。おそらく幼少児は「知ってる。

知ってる」と元気に言うにちがいない。しかし,「毎日飲んでる」というほかには,

話題がひろがらないのでは。

 この本は,さっそく牧場に読者をつれだす。そして,メス牛の乳搾りの場面をク

ローズアップで見せる。毎日飲んでいる牛乳は牛のあかちゃんを育てる栄養たっ

ぷりの大切なミルクそのものであることを知らせる。

さて,ここから子どもたちがあまり知らない新しい世界に誘い込んでいく。

「ミルクは,ぎゅうにゅうとして のむだけじゃない。いろいろなたべものに 

へんしんするんだ。さあ、この ミルクを おいしいものに へんしんさせてみ

よう!」と話が続く。まずは 生クリームに変身である。生クリームは家庭でも

保護者と一緒なら簡単に作ることが出来る。大人向きの解説も書かれている。

さらに,バターやチーズ作りにも挑戦できる。できたての製品をおいしくいただ

きながら,牛乳の不思議な変身ぶりを実感できるのがいい。 
                            2010,10発行  1,200円

『エネルギーってなんだろう』
       (みつけようかがく)キンバリー・ブルーベイカー ブラッドリーさく 福音館書店
最初に,いく人かの子どもが凧を揚げたり,バットでボールを打ったりしている場面,
キャンプファイヤーをしている家族がソーセージを焼いたり,パンを食べている場面,
丘の上にのっかっている石ころの絵など描かれている。「これら すべてのものが 
さまざまな しゅるいの エネルギーを もつています。」と綴られている。
 自然界のさまざまな現象は,根源的な原理が元になっている。その根源的な原理
に気づかせるのが科学である。
 この本は,その見えない原理の一つである〈エネルギー〉を,小さな子どもたちに
感じてもらおうという内容である。続いて,太陽や電球から発している熱,子どもたち
が道具を使って遊び回っている絵など,多様なエネルギーの姿を描いたあと,少年
がボールを投げる動作,バットをふる動作から〈エネルギーの移動〉を語りかける。
また,エネルギーには,ものを動かすエネルギーの他に,燃料として使われるエネ
ルギーもあることを描いていく。エネルギーの転換の話である。
 こんどは,わたしたち人間はいろんな食べ物からエネルギーを貯え,そして消費し
て生活していることが語られる。人間など生きものはエネルギーの消費者なのだ。
 最後に位置エネルギーが登場する。丘の上にあった石ころを少し押すと,丘の上で
たくわえられていた石のエネルギーが、動くエネルギーに換わって下に転がっていく。
多くのエネルギーの大元は太陽であることを語りながら,自動車の衝突によってエ
ネルギーが次々と転嫁されていく様子も描いている。別刷りには訳者山地憲治さん
の「エネルギーの量と質」が挿入されていて参考になる。
                         2010年10月刊 1,300円 (西村寿雄)

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