わたし好みの新刊―     201206

『あげはのへんしん』  須田孫七/監修 榎本功/写真 ひさかたチャイルド 

  この本は,ひさかたチャイルド社の〈しぜんにタッチ〉シリーズの写真本である。

このシリーズは,たんに掲載写真の解説をするのではなしに,子どもの目線に立って

疑問を投げかけながら、場面が展開していくところに特長がある。この本の最初のペ

ージで親向けにこう書かれている。

「この本では、春から秋にかけて身近に見られるアゲハを取り上げています。1ケ月

ほどで成長の変化を見届けられるアゲハは、観察に適した昆虫です。また、都市部で

も見つけやすいので、だれでも観察できるでしょう。どうぞ、この本を通してアゲハの

成長をおいかけてみてください。本を読むだけでなく、実際に飼育して観察しても楽し

いでしょう。」

 我が子を身近な自然に触れさせたいと思う親御さんにも参考になる本である。

「ぼくの うちの にわに/きれいな ちょうが とんで きた。/

「あげは」って いう ちょうだよ。」 
「たまごから どんな あかちゃんが うまれるのかな?/

ぼく かんさつして みることに したよ。」 「ほら みて!/

きれいな きれいな みどりいろに なった。/あげはって おもしろい。」

 「きょうは ぜんぜん はっぱを たべない。/

それに、なんだか へんな うごきを はじめたよ。」 「…それから/

へんな ポーズで/うごかなくなっちゃった。/いったい/どう したんだろう?」

 「これ「さなぎ」って いうんだって。/

さなぎに なってからは、なにも たべないし うごかない。/

もう なんにちも たったけど、ずっと このままだ。」

 このように小さな子どもの疑問や驚きとともに場面(写真)が展開されていく。
読者とな
る小さな子どもも自分が疑問をいだいているように読み進められていく。
ほとんどのページ下には,小さい文字で保護者向けに参考になる話が添えられている。

保護者も安心して子どもの疑問に寄り添うことができる。  

        201203月刊  1,200

 

『野菜をそだてる12か月』   亀田龍吉/著   アリス館

 昨年来続いて出版されている〈生きものカレンダー〉の「野菜」版である。A4

開きのちよっと個性的な本の作りが特長である。

 カバーに「野菜も、花も咲けば実もなる。野生の植物と変わることのない地球上の

生きもののひとつです。畑へ行って観察してみてください。そして、できたらこの本を

参考にして自分でも育ててみてください。」と書かれている。

この本を見ていると,庭先やプランターにでも,ちょっと野菜を育ててみたくなる。

最近は,ビルの屋上などでも菜園が作られているとか。ミニ菜園を楽しむ人にも参

考になる。

 まずは「春」,寒い冬をこして畑の作物にも春が来る。ミズナ,コマツナ,ソラマ

メにエンドウと花をつける。タマネギは収の季節である。夏もののジャガイモやカボチ

ャの苗も植える季節だし農家の人は忙しくなる季節だ。4月になると昨年植えたキャベ

ツも収穫できる。

 「初夏」になるとクリの花が満開,実のなる木も花をつける。野菜では,ナスビや

ニンジン,ゴボウにオクラなどの花も咲く。ミニトマトの収穫も間近い。8月「夏」に

なると,いよいよスイカの季節。それにミニトマトやナスも収穫できる。「秋」はなん

といっても実りの季節。ダイズやサツマイモ,ダイコン,ラッカセイなども収穫の季節

になる。プランターにイチゴを植えるのもいい。初夏にはみんなでおいしい実が食べら

れる。

所々に「観察しよう」のコーナーも設けられている。「野菜はどこを食べているの?」

「野菜の花」「野菜と虫」「サツマイモ堀り」など興味深い話がまとめられている。

 野菜作りの本はたくさん出ているが,手頃な解説と写真で野菜作りの1年間がなが

められる本として推薦できる。      

          20123月刊   1,600(西村寿雄)

                   新刊案内 6月