わたし好みの新刊―   20132

『不思議おもちゃ工作』(工作絵本)

 平林浩著 モリナガ・ヨウ絵  太郎次郎社エデイタス

表紙カバーに次のように書かれている。「おもちゃを作って遊ぶことは、それだけ

でたのしいことです。そのおもちゃが動くしくみを知れば、もっとたのしくなります。

この本には、作って遊びながら、不思議なしくみを発見できるおもちゃがたくさんの

っています。」

 著者の平林浩さんは,長年,仮説実験授業という科学教育にかかわってこられ,

退職後も「出前教師」として,地域の科学教室に出向いておられる科学教育のベ

テランである。その平林さんが長年各地で子どもたちいっしょに作ってこられたもの

作りをこの本にまとめられている。この本の特徴は,なんといっても不思議なしくみ

が発見できるプロセスまで書かれていることにある。ところどころに「科学の眼」

というコーナーがあり,かなりのページを割いて不思議なしくみの解説もされている。

ただものをつくるだけでなしに,作って遊べる不思議さにも興味がもてるように工

夫されている。

 この本では,作り方のイラストも順を追ってていねいに書かれている。「まねを

しながら作ることからはじめよう」の主張どおり,線の引き方やコンパスの使い方,

ひもの結び方に至るまで,まねができるようにていねいなイラストがモリナガ・ヨ

ウさんによって描かれている。

 工作の内容も,〈不思議おもちゃ1〉で,「パッチン」「マジックカード」

「パタパタ」「のぼり人形」「ギーギーゼミ」「かみつきひも」など簡単なつく

りのものがあり,〈不思議おもちゃ2〉では,「紙トンボ」や「ブーメラン」

「びゅんびゅんごま」など,ちょっと遊ぶのにテクニックがいるものが並ぶ。

さらに〈科学おもちゃ〉では,「尿素の花」や「みょうばんツリー」作り,ラ

イデンびんで「静電気集め」や,火打ち石で「火をおこす」ことなど,少し

科学実験的要素のもの作りが取り入れられている。このあたりの「科学の眼」

コーナーでは,「眼に見えない原子や分子がみえるようになるとき」などの

読み物も挿入されている。もの作りを通して科学へ興味が深まる構成になって

いる。もの作り本の原型となる本である。姉妹編に『伝承おもちゃ&おしゃれ

手工芸』がある。            201212月刊  1,900

 

『雲ごよみ』(天気と季節の観察図鑑)

      高橋健司/写真・文  山川出版社

 眺めて楽しめる雲の図鑑である。『毎日小学生新聞』に連載された

記事中心にまとめられたとあるので,小学生にも読めるやさしい表現

になっている。刻々とその表情を変える雲は一見つかみどころがない。

その点,この本では「雨が降るしくみ」で一通りの雲の種類になれる

ように構成されている。その後,「晴れたときの雲」「雨の時の雲」

「春夏の空」「秋冬の空」「風と光の魔法」と個別の雲が紹介されて

いる。

最初に見開きで「雲の流れ」と天気図との関連がまず示されている。

移動性高気圧からだんだんと低気圧に近づいていく過程に沿って変

化していく雲の姿が紹介されている。これは雲を全体的につかむ大

切な視点である。最初にこのページとにらめっこしていておくとい

い。低気圧の接近と同時に大切なのは前線の移動である。温暖前線

の前では雨雲が主役になる。寒冷前線の通過とともに積雲へと変化

していく。おおざっぱには「巻」(巻雲,巻積雲),「層」(層雲,

高層雲,乱層雲),「積」(積雲,高積雲,積乱雲)と変化すると

見ていい。次の見開きでは,「雲ができるわけ」が書かれている。

基本的に,雲は上昇気流にのって上空で冷やされてできる水滴,も

しくは氷滴である。しかし,その形が「温暖前線の雲」と「寒冷前

線の雲」とではでき方にかなり違いがある。「温暖前線の雲」は水

平に広がり「寒冷前線の雲」は縦に盛り上がる。時には対流を起こ

し雷雲も発生させる。これらを頭に入れておくと,雲の形で気象状

況をつかむことができる。それらを知った上で,「レッスン1 雨

が降るしくみ」を見ていくと雲の変化と気象条件がよくのみこめる。

最初からあまり雲の個別の名前などは気にしないで,「巻」→「層」

→「積」と雲の変化を見ていけばいい。この項でページの半分を裂

いているので著者も力を入れている部分である。あるていど,雲の

形になれたところで「レッスン2」へと進めばいい。雲と楽しくつ

きあえる本である。         201211月刊 1,500円(西村寿雄)

 

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