20133

『よくわかる電気のしくみ』(サイエンスブックス)

   伊藤尚未著   誠文堂新光社

 このシリーズは,少し難解な表現があったり読みづらいことが多い。しかし,
この本
の著者が伊藤尚未氏とあるので期待しながら読み通した。伊藤尚未氏
は,『世界一簡
単なLEDのきほん』(誠文堂新光社)など何冊か分かりやす
い電子工作の本を出して
おられる。伊藤尚未氏は電子工学の専門家と言うよ
り芸術系の専門家である。それだ
けに,描かれているイラストや解説文などた
いへん分かりやすい。

 「Part1 電池でできる電気の実験」の項。金属は電気を通しやすいこと
を実際に
試しながら読めるように解説されている。〈導体と絶縁体〉〈電気の
流れる道が「回路」〉
などやさしく解説が続く。〈電気の正体〉では,自由
電子の動きにまで話を勧めている。

 ここでしばしば混乱を招くのは「電流の流れる方向」である。ここのところ
も,〈電気
も高い所から低い所へ流れる方がイメージしやすいでしょう〉とい
う表現で,うまく「電
気はプラスからマイナスへ」という現実的な規定へ理解
をすすめている。
 「Part2 電
気と磁石の関係は?」は,なかなか本だけで理理解は難しい。
フレミングの法則までこ
こで解説する必要はあるのかどうか。「Part3 電圧
・電流に強くなろう!」で,〈豆
電球の直列・並列のつなぎ方〉など分かりや
すく続く。ショート回路など電池でも発熱・
発火するという危険な場面も実験で
示している。続く〈電圧・電流ってなんだ?〉から
電力の話は,少々理屈が先
行するが,電気工作をするには基本的な知識。ゆっくりとく
りかえし読んで見たい。
 次の〈電流と電圧の測り方〉は,専用の電流計を使うより,後
半にあるテス
ターを使った利用法を前面に出す方が現実ではないか。コラムにある「発
電や
送電のしくみ」は,本文としてもう少していねいな解説がある方がいいのでは。
ここ
では,交流の話が不可欠である。一部誤植もある。

Part4 電気に仕事をさせてみよう!」もわかりやすい。ただ,電子レンジの
話はさし
絵と合っていない。電磁波のことを少し書かないと理解は難しい。こ
こから,後半にある
Part5 かんたんにできる電子工作〉は著者のお手のも
の。少々マニアックではある
が楽しい電子作ができそうである。 
                     
201301月刊  2,200

 

『まるごとキャベツ』(絵図解 野菜応援団)

  八田尚子/文 野村まり子/絵 絵本塾出版

「私は小学5年生の春菜。いま、キャベツのことを調べている。キャベツを見る

と、次から次へと疑問がわいてくる。キャベツはふしぎな野菜だ。」と,出だし

のことばである。

 まず,春菜さんがキャベツ畑に行き,農家の人との会話も交えながらからキャ

ベツでサラダを作った話から始まっている。

5月初め、私とタローは、いつもと違う道を散歩した。

そこは一面のキャベツ畑で、モンシロチョウが飛んでいた。

初めて見る畑のキャベツは、何枚もの大きな葉っぱに囲まれている。

近づいてみると、葉っぱにアオムシがいた。……

明るい春の田畑が淡い色彩で広がっている。そこから,春菜さんのキャベツ

調べが始まる。

まずは,〈キャベツのふるさと〉。キャベツはどこの国でいつごろ人の口に

入ったのだろうか。

なんと,古代エジプトから宴会の前にキャベツが食べられていたとか。当初キ

ャベツは薬草だった。その後キャベツの塩漬けが船乗りの命を救ったとか。西

洋に伝わるキャベツ料理も紹介されている。日本でのキャベツ栽培の歴史も興

味深い。江戸時代から長崎を通じて伝わっていたが,本格的な栽培は明治以降。

明治の初期に北海道で栽培が開始されたとある。そのほか,〈葉が巻くなぞ〉

も興味深い。正式には「巻く」というより,新しく出た葉が丸く重なっている

のだという。次は,キャベツの仲間の紹介。キャベツの仲間というとどんなも

のを思い浮かぶだろうか。

ケール,ブロッコリー,カリフラワー等々,8種類も描かれている。最後は

〈キャベツの花が咲いた〉。植物の基本である花にまで言及しているのがい

い。野村まり子さんの絵が生きている。 
                   
 201212月刊 1,600

 

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