―わたし好みの新刊―   201311

 

『ちきゅうがウンチだらけにならないわけ』 松岡たつひで著 福音館書店    

 松岡達英さんの変わった本が出た。白黒のチワワ犬?が,さまざまな動物のウンチ

を見ながら感心したり驚いたりしていくというストーリー。小さな子どもたちも楽しみな

がら読んでいける。子どもたちは日頃ちょっと敬遠しがちなウンチを通して多様な生き

物の世界も知っていくのではないか。

 最初,カラスがウンチを落として飛び去っていくのを見てチワワはちょっと不満顔。

「行儀知らずのカラス!」といわんばかりの顔である。そこで,いつも人にウンチを

拾ってもらっているチワワは考える。

「ウサギも カエルも カタツムリも…みんな ウンチを ひとに ひろってもらわない」

「なんで ウンチを したままなんだろう」「ほかの いきものの ウンチが きにな

ってきた」

 チワワは〈図書館〉に行って,いろんな動物のウンチのしかたを調べていく。最初

はゾウ。さすがゾウは大きなウンチ。一抱えもあるようなウンチがゾウのおしりからぽと

り。あまり大きなウンチなのでチワワの顔もかくれてしまいそう。次は,小さなウンチを

する生き物たちが出てくる。アカネズミにアシダカグモ,とんぼやダンゴムシまでたくさ

んの生き物が登場する。やがて地上で生きる動物たちがまとめて登場する。寒冷地や

針葉樹林帯,砂漠の上や熱帯雨林帯とさまざまな場所にくらす動物が所狭しと描かれ

ている。みんなウンチをして歩いている姿がユーモラス。樹上の動物たちはみんな木

の上からウンチを落とす。鳥たちも空から遠慮なしにウンチをまき散らす。白い鳥のウ

ンチに見とれているとチワワの頭の上にウンチがぽとり。魚たちは海中でウンチの垂れ

流し。

「地球はウンチだらけに なっちゃうよ」とチワワは心配するが…。やがてウンチは

そのまま地球にしみこんで植物たちの栄養になっていくことをチワワは知る。なかには

ウンチを食べる生き物もいる。チワワはウンチも大切な地球の資源であることに気づい

ていく。すると,ふと自分のウンチや人間のうんちは捨てられているが,だれかの役

に立っているのだろうか?と疑問を持って終わっている。この本を読んで子どもたち

はどんなことを考えるだろうか。         20136月刊  1,400

 

『ウミショウブの花』(たくさんのふしぎ) 横塚眞己人文・写真 福音館書店

場所は沖縄県西表島海岸。写真家の著者はあるとき水面に浮かぶ奇妙な浮遊物に目

をうばわれる。近づいてよく眺めてみると米つぶぐらいの大きさで雪だるまのような白

い粒が水面に浮いている。風が吹くと水面をすべるように移動していく。「いったい何

者なのか? いつ、どこからやってきたのか?」と著者は好奇心にかられる。この奇

妙な花はウミショウブという海草(ウミクサ)の雄花だと,島の学校で教わる。「この雄

花はいったいどこから来たのか,どのような旅をするのか,どのようにして雌花にたどり

つくのか,そしてどんな種を実らせるのか」,美しい写真で著者の追跡が始まる。

ウミショウブの花は月に一度の大潮干潮時にのみ咲く不思議な花である。やがて,著

者はシュノーケルをつけて海底へ。ウミショウブの茂みをかきわけていくと,やがてぽ

っかりと口を開けた一つの茎状の筒が見える。そこには白くて丸い粒がぎっしり,その

茎からときどき白い粒が水面に浮かんでいく。これが雄花の誕生だ。それでは,雌花

はどこかにあるのだろうか。やがて,根元から伸びた一本の茎が見える。よく見ると先

から少し伸びた茎が見える。潮が引いていくとその雌花がさっと開いて雄花の到来を待

っている。潮が引いたときだけ受粉できるようにしくまれたたくみな植物界のしわざであ

る。やがて潮が満ちてくると雌花は雄花をとりこんで受粉する。なんという自然界の絶

妙な雄と雌の出会いではなかろうか。では,ウミショウブはどんな実をつけるのだろうか。

やがて,著者はしっかりと種が収まっている実を発見.その種がやがて一つ二つと海面

へ上っていく。海面に浮かんだ種はまたどこかで沈んで海底に新たな芽生えが誕生する。

海水面の変化を利用しながら水面で静かに命をつないでいる植物に見とれてしまう。

豊富な写真がさらに手助けする。    20138月刊  700円 (西村寿雄)

 

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