―わたし好みの新刊―     201312

『恐竜 骨たちは語る!』(科学キャラクター図鑑)

サイモン・バシャー絵 ダン・グリーン文 池上理恵訳 玉川大学出版部

 「科学キャラクター図鑑」シリーズの一冊である。このシリーズはサイモン・バシャ―による特異

なキャラクターが特徴になっている。今回取りあげた『恐竜』では、サイモン・バシャ―のイラスト

が非常にうまく内容と合っている。「シンプルな描線と華麗な色調で描かれているキャラクターは、

切れ身のよさと愛くるしさの両方を巧みに融和させている」と巻末にある。その通りの恐竜キャラク

ターが次々とが登場する。その上各恐竜の特徴がさりげなくまたは大胆に描かれていて科学読み物

としても十分に応えられる。

「恐竜」は子どもたちにも人気の古生物だ。それだけに、恐竜の本はたくさんの恐竜が登場させ

るだけではなく、どこに視点を当てて読めばいいのか見当がつく本であってほしい。この本では、

恐竜の仲間を「草食恐竜」と「肉食恐竜」に大きく分けて印象づけている。そして、それぞれの

章の初めにそのグループの特徴と見所を簡潔に1ページで語っている。読者はそこに書かれた特

徴を各恐竜のイラストにてらして眺めていける。文章もユーモアがあって楽しく読める。
「おれは根っからのジャズファンだ。びんびんビートの効いたジャズが大好きな恐竜さ。そうさ、お

れは鼻のラッパを鳴らすんだ。鼻の空気の通り道は、頭の上に1.8mものびたトサカの内部で

折り返しているんだ。……」(パラサウロロフス)。

後の章で「翼竜・羽毛恐竜」「魚竜・首長竜」が登場して当時の爬虫類を見渡しているが、欲

を言うと、「爬虫類」「恐竜」についての関係が見えるような解説が1ページでもほしい。

                            20136月刊 1,400

 

『ダイオウイカを追え!』     窪寺恒巳著   ポプラ社

深海には今も「怪物」がいる。その一つが,体長が18mはあるというダイオウイカだ。今まで

に生きているダイオウイカを見た人はいなかった。浜に打ち上げられた姿からおおよその形が知ら

れていた程度だ。

1998年,なんとそのダイオウイカを撮影してみんなに見てもらおうという企画が国立科学博物館で

立ち上げられた。その推進役を務めたのがイカ,タコの研究者であった著者の窪寺恒巳さん。こ

の本は,その未知の深海にいるダイオウイカを苦労の末にカメラに収めるまでのいきさつや,NH

Kのテレビ局も加わってダイオウイカの動く姿をビデオに撮影するまでの大捕物劇が描かれている。

読者もわくわくする臨場感あふれる読み物になっている。イラストも多く読みやすい。

ダイオウイカは鯨のいる水深500mから1000mの海にいることを推測した著者は不思議がる。

今までもトロール網や深海艇が1000mぐらいの海中に沈んでいるのにダイオウイカが捉えられ

たことがない。なぜだろうか。深海艇や船の出す音や光でダイオウイカが逃げているのではないか。

そう推測した著者たちは音や光を出さないで撮影する方法を工夫する。3年目になってやっと生

きたダイオウイカの姿がカメラに収まっていた。ダイオウイカを引き上げることにも成功したが船

上ではすでに死んでいるダイオウイカだった。

その後,NHKスタッフも交えての動くダイオウイカ撮影プロジェクトが動き出す。こうなると最新

の技術で最新の機材を投入しての撮影劇だ。それでも,深い海の中,深海艇カメラの前にダイオ

ウイカをおびき寄せるアイデアはおもしろい。

       20137月刊  1,300円(西村寿雄)
              「12月 新刊案内」