―わたし好みの新刊―     20142

科学ずかん『変身のなぞ』             玉川大学出版部

        原田佐和子.小川真理子.片神貴子.溝口恵/文 富士鷹なすび/

  この図鑑は原子・分子を基本に書かれている。このような科学読み物は仮説実験授業

関連の本以外ほとんどない。この本は各分野のモノの変化を「変身のなぞ」としてとらえ

原子分子のイメージで解説している。あわせて富士鷹なすびさんの挿絵が理詰めになり

がちな頁を柔らかい雰囲気でつつんでいる。

 最初に砂糖を通して粒のイメージへ読者を導く。拡大した砂糖分子の挿絵で,「原子」

「分子」という言葉が読者にふれる。初めて「原子」「分子」を知る子どもたちには少

々唐突の感もするが「原子というのはそんなものか」というイメージがまず頭に入ればい

い。後で出てくる「変身の世界」で「原子」「分子」という言葉にもなれ親しんでこれる。

 初めに「0章 ようこそ変身の世界へ」がある。ここでは,現象的にわかりやすい「水」

を取りあげている。ここで原子の結びつきのイメージがより確かになるだろう。

次からいよいよ本題に入る。初めの章は「ふくらむ・ちぢむ・かたちが変わる」で

〈固体,液体,気体の変身,ものがふくらむ変身,昇華するドライアイスの変身,結晶

の話へと続く。このあたりで原子・分子の運動イメージもふくらんでくる。次は「色が変

わる」「溶ける」と続くがちょっと難しい場面もある。石が溶けるという話は石灰岩のみ

の話。次章「爆発する・燃える・光る」では原子の結合エネルギーの話が出てくる。

「つながる」では高分子の話があり人の生活ともかかわって楽しめそう。「ものはめぐ

る」では循環の話でまとめている。

 図鑑仕様なので仕方がないが解説が主となっている。一部に難解な言葉も見受けられ

るが全体的には楽しく編集されている。少々値が張るが図書館・学校では備えたい一冊

である。                     (2013,11刊 4,200円)

 

『クイズ式 たのしい恐竜学』          福井県立恐竜博物館 編著  今人舎

編著者は,日本一の恐竜博物館「福井県立恐竜博物館」である。まだ日本では恐竜

化石が珍しかったころ,福井県勝山市で恐竜化石が多く見つかり,東洋一氏(元館長)

らの研究で一躍日本を恐竜王国の座に導いた。福井県立恐竜博物館は研究歴からいっ

ても資料の保管量からいっても日本一の恐竜博物館である。そうした一級の博物館がこ

うして普及用の恐竜の本を作るのも珍しい。少し辺ぴな位置にある恐竜博物館の宣伝に

も役立ちそう。

カバーに「恐竜は、子どもたちにとって大好きな存在です。しかしただの好奇心だけ

にとどめず、ほんの少しでも科学的に学ぶことができれば、恐竜学習は、物事を多面的

にとらえる、合理的に考える訓練にもなるとわたしは信じています。この本は、そんなわ

たしたちの思いからつくったものです。…」と東洋一さんの言葉が添えられている。読

者にもこの思いが伝わるような読みやすい本である。情報量もそんなに多くない。

この本は大きく5つのパートに分かれている。パート1は「恐竜の研究」で,前半に

恐竜の分類についての記述がある。恐竜の分類はわかるようでわかりにくいが,他の爬

虫類と何がちがうのかなどわかりやすい解説がある。パート2は「恐竜のからだ」で,

〈角竜類の大きなえりかざりは、何の骨?〉などがある。パート3は「恐竜のくらし」で

〈恐竜が食べていたものを知る手がかりは?〉などが並んでいる。パート4は「恐竜の

発掘」で,世界各地の発掘現場の写真が豊富である。パート5は「日本の恐竜」とな

っている。

この本の特徴は,全パートに渡ってクイズ形式で始まっていることにある。ほとんどに

選択肢があるので問題の意味も把握しやすい。博物館での展示の手法が生かされている

のだろうか。写真も多く子どもにも親しみやすいのではないか。

  2013,7刊 1,500円(西村寿雄)

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