わたし好みの新刊     20145

『地層ってなんだろう』(1観察しよう) 目代邦康著  汐文社  

 この『地層ってなんだろう』シリーズは,第1巻「観察しよう」,第2巻「実験しよう」,

第3巻「歴史を調べよう」からなっている。この本はその第1巻である。ふだん都会にい

ると地層にはなかなかお目にかかれないが,ちよっと郊外に出るとその地の特長のある地

層と出会うことが多い。著者は「この本では,身近にある地形や地層をどのように観察す

ればよいのか,場所ごとに整理しました。現地で地形や地層をくわしく観察し,過去に何

が起こったのか読み解いてください。」と書いている。これは少々難問であるが,とにか

く,海岸から川原,山や湖,平地での各地の地層が散見できる。いくつかの場所に出か

けてみよう。

まず,海岸である。一口に海岸と言っても多様である。干潟,砂浜,磯では全然景観

が違ってくる。干潟ではウェーブリップル(波の動きに応じて海底にできる波紋)が美

しい。磯では,隆起した海岸や海食洞も見える。暴風時の波の強さがしのばれる。次

は川である。川は蛇行を繰り返して流路を広げ,水害と背中合わせである。氾濫をふ

せぐための人々の知恵が形として各所に残っている。川ぞいの露頭は気兼ねなくハン

マーがたたけるのでいい。平野では断層崖が見られる場所がある。注意して眺めると、

意外と断層地形が目にかかる。地層を見るには山もいい。一口に山と言っても、火山あ

り,堆積地があり,山崩れありと多様だ。高山に行くと氷河時代のなごりも見られる。

湖もさまざま,火口のカルデラ湖もあれば断層によってできた断層湖もある。かつての

海とつながっていた湖もある。南の島では隆起サンゴ礁が見られる。サンゴ礁は石灰

岩特有の地層である。街中でもさまざまな地層が見える石材に出会える。

この本では,いろんな場所での地層が紹介されていて地層の視野が広がるが,褶曲

地層などはない。それらは第3巻か。この巻でも,少しは地球のエネルギーと関連し

て言及されていると動的な地球が実感できるのだが。   2013,11刊 2,300

 

『調べてみよう 地面のボタンのなぞ』

 日本土地家屋調査士会連合会編 日本加除出版株式会社

「地面のボタン」という命名は,富山県の小学生2年生が夏休みの自由研究でつけた

名前だという。「地面のボタン」というのは道路などに埋められている境界標識やガス

管等の認識標のことである。土地の境界を明確にする必要が多くなってきた近年は,

道路の隅にカラフルな鋲が打ち込まれていることが多い。富山の小学生がそこに目を

つけて「地面のボタン」として夏休みの研究課題とした。いったいこのボタンはだれが

なんのために付けたのか,どんな種類があるのか,どんなことに役立っているのか,

富山の小学生はそれらの疑問を解決するために富山県の土地家屋調査士会を訪れた。

そのことがきっかけになって,日本土地家屋調査士会連合会が小学生にもわかる鋲や

杭の解説をしたのがこの本である。小学校中学年から読めるように編集されている。

子どもの身近な着想点がおもしろい。

まず,富山の小学生は学校の帰り道にどんなボタンがつけられているか,丹念に調

べて地図に書き込んだ。赤や銀色のボタン,丸や四角のボタン,大小ちがったボタン

などさまざまである。なかには,絵模様があったり,文字や番号が打ち込まれていた

りしたのもあった。

「これらのボタンはなんのためにだれがつけたのだろう」と疑問に思った小学生は土

地家屋調査士会でいろいろ教わり,多くのボタンは地面の測量で使われていること,

土地測量の基準点として使われていることなどを知る。ここで,鋲をもとにした測量の

方法などの説明もある。ボタンの意味を知ったら,こんどは「もっとえらいボタンをさが

せ!」と興味が広がる。えらいボタンとは測量の基準点になっている三角点のことであ

る。三角点の話,三角測量の話も加えられている。さらに,「水準点」「電子基準点」

「公共基準点」などの話もある。後半に「地面のボタン 大図鑑」として,さまざま

なボタンの一覧がのせられている。金属びょう,基準点,境界プレート,街区多角点,

三角点など多様にある。ここまできたら測量の歴史など少し入れると話が広がるのだ

が。                 2013,11  1,200円(西村寿雄)

 

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