わたし好みの新刊    20146

『みそができるまで』(すがたをかえる たべものしゃしんえほん2

宮崎祥子/構成・文 岩崎書店  

 子どもも読める「みそづくり」本は,今までに何冊か出ている。『みその絵本』

(つくってあそぼう)農山漁村文化協会や『まんまるダイズみそづくり』(かがく

のとも)福音館書店などが出ている。特に前著はみそづくりの歴史から麹の話,味

噌造りの方法までくわしく紹介している。今回ここに紹介する絵本はルポライター

が書いている。写真の効果もあって,短い文章の中にもみそづくりの醍醐味がよ

く伝わってくる。

 まず,みそを作るためのダイズのたねの話がある。大豆は〈赤いくすりをまぶし

た大豆〉を使うという。〈赤いくすりをまぶした大豆〉には,鳥やタネバエという虫

からたねを守ると同時に病気も防ぐ役目を持っているという。何か化学処理がされ

ているのだろうか。次は大きなカマからゆであがった大豆がザァーッと流れ出てい

る写真。強火で1時間半,さらに弱火で4時間ほどゆでてやわらかくなった大豆

が流れ出る。こうばしい大豆のかおりがただよっている。やがてゆであがった大豆

はネットコンベアーで次の工程へ。カマから出てきたのはにょろにょろに姿を変え

た大豆ペーストだ。粘っこくなった大豆ペーストがどんどん流れ出るがこのままで

は味噌にならない。こうじ室では,むした米にこうじ菌をふりかけ〈米こうじ〉が

作られている。今度は大豆ペーストに〈米こうじ〉をまぜて再び絞り直す。水と塩

をまぜると〈しこみみそ〉のできあがりである。〈しこみみそ〉はやがて古いみそ

樽の中におさまる。古いみそ樽には,味噌をおいしくしてくれる微生物が棲みつ

いているという。〈しこみみそ〉の入った樽の上に人が乗り,足で踏んでいく。

〈ふみこみ〉という大切な工程だ。〈ふみこみ〉が終わった樽の上に石を載せて

1年間はねかすと,おいしい味噌のできあがりだ。味噌造りは,単純な作業のよ

うに見えるがなかなかの重労働だ。この本は写真で楽しめる味噌造りの本である。

最後に各ページの補足解説がある。     2013,12刊 2,200

  

『水中の小さな生き物けんさくブック』  清水龍郎監修  仮説社  

 一風変わった「本」である。「本」というより観察カード集といったタイプ。

一つ一つの生き物について写真とイラストがあり,簡単にその生物の特徴や生活が

わかるように書かれている。イラストも楽しい。

「水中の小さな生き物」というと,ふつうは小さすぎてなかなか目にしない。

感動的に見るには顕微鏡などの器具もいる。昆虫などと違って学校などでもなか

なか扱いにくい生き物だ。それだけに,本の前半には,顕微鏡のしくみや使い方,

微生物のつかまえ方,微生物の観察の仕方や写真のとりかたなどフォローはされ

ている。小さくて扱いにくい微生物にも親しめるように体裁や内容に工夫がなされ

ている。この本を手にした子どもたちが〈水中の小さな生き物〉に手をのばせる

かどうか。

 まず,この本をパラパラとめくってみる。見開き頁に一つの生き物写真とイラス

トが目に飛び込んでくる。「代表的な24種類の微生物にしぼった」とあるので気

軽に各ページが楽しめる。小さな生き物代表であるミジンコを見てみよう。ミジン

コはエビ,カニと同じ甲殻類の仲間とある。ミジンコの特徴として,「☆丸く透き

通ったからだ ☆大きな黒い目が一つ目立つ ☆腕のような触角で水をかいで泳

いでいる」と大きな文字で書かれている。確かに大きな複眼が一つ見える。写真

は片面なので,下にも複眼がありそうに見えるが複眼は一つである。背中には大

きな幼生が入っているように見える。ミジンコは体内で卵をふ化させ幼生も育てや

がて体外に子どもを放出させる。「おもしろ豆知識」(コラム)によると,環境に

よってオスがメスになったりするとのこと,ミジンコはおもしろい生き物だ。

サービスとして,各ページには動画が見れるQRコードも入っている。簡単に

Webでも楽しむことができる。あとがきには「はじめて水中の微生物を見る子

どもと,指導する先生や保護者のために…」とある。微生物を採集して顕微鏡

下で見て記録するのに手助けになる「本」である。

  2014,4刊  2,200円(西村寿雄)

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