わたし好みの新刊    20148

『イヤムシずかん』      盛口満/文と絵   ハッピーオウル社

 奇妙な本が出た。その名も『いやむしずかん』。〈虫がいや〉と言う子ども

向けのお説教本かなと思ってパラパラめくってみると,どうやら,まんざらそうでも

なさそうだ。この本には,〈虫がスキな人代表〉カイくんと〈虫がイヤな人代表〉

カナちゃんが登場する。初めに,カナちゃんとカイくんの虫談義がある。

 「虫なんて、だいっキライ」「どうして?」「だって虫はクサイ」

「虫ってクサイかな?」「さわるとブツブツができそうだし」

「毒をもっていそうだし」「ダイジョウブだけど」「触覚あるのもイヤ」

「クワガタとかは?」「うらをかえせば、みんなゴキブリ!」

「テントウムシならカワイイけど」「なんたって虫がスキ」「ブー!」

「だつて虫はカッコいいよ」「やっぱりカッコイイ!」「ホラ、カッコイイ」

 この本を手にした子どもがこの虫談義にのってくると,まずは著者・編集者

の意図するところにはまる。さて,どうなるだろう。絵は盛口さんのメリハリの

ついたイラストで圧倒する。まずは,「イヤムシかるた」。7種のイヤムシが

登場する。左右見開きで対象が確認できるがちょっと漢字は難解。次は15

に大きく描かれた8種の蟻がずらりと並ぶ。蟻の顔もさまざまだ。

「アリは、小さくていっぱいいるからイヤ。」

「なかには、カッコイイのもいるんじゃない?そんなふうに思えるアリ いるかな。」

と自問自答するカナちゃん。次は,ハチの仲間。「ハチは、刺すからイヤ。でも、

どのハチもみんな人を刺すわけじゃない。ハチの毒針は、もともと卵をうむための

くだだった。…」とハチが毒針を持つに至った経緯が語られている。あとにはケ

ムシ,くさい虫,テントウムシ,ゴキブリなどが登場する。最後にキレイに羽根が

青く光る虫が並ぶ。「青くかがやく虫たち,キレイキレイ。…」カナちゃんの心

は少しは動いたかな。

「ここだけの話ですが、みんながイヤだという虫は、実は人気者じゃないかな。

そう思って、イヤムシたちの人気のヒミツを書きました。」と後書きにある。

逆説の発想がおもしろい。   2014,5刊  1,500

 

『ウマがうんこした』 

   福田幸広/しゃしん  ゆうきえつこ/ぶん  そうえん社

 「あっ!オスのウマがうんこした!」

「ああっ!あっちでも オスのウマがうんこした!」

「おかのうえは あっちもこっちも ウマのうんこでいっぱいだ。」

「ウマのうんこは すごいんだよ!?」

 さて,ウマのうんこは何がすごいんだろうか。うんこの量がすごいんだろうか。

ウマのうんこにはなにかの秘密が託されているのだろうか。託されているとしたらど

んな秘密だろうか。

 「あっ!!オスのウマがうんこした!」最初のページだ。そして

「あっちでも オスが うんこした!」とつづく。

オスの肛門からは見事なうんこがぽとり,リアルな写真である。次のページでは,

オスがさかんにうんこのにおいをかいでいる。「これは だれの うんこかな?」

,一匹一匹のうんこのにおいがウマを識別できる。

「あっ!うんこの うえに うんこしている」,

これはなんのためにしているのか読者には想像できるだろうか。

「オスは ほかの オスの うんこが とっても 「き」になる。」とある。

みんな,自分のうんこを残していく。うんこの臭いが,自分がここにいることを

アピールをしているのだ。

 次は「メスが うんこした!」。そうなると,「オスは メスの うんこも 

とっても「き」になる。」つまり,結婚相手を見つけるのにもうんこの臭いが大き

な役割をはたしている。やがてカップルが誕生しあかちゃんが生まれた。他の動

物と同じように,あかちゃんはまずはお母さんのお乳を飲む。でも,それだけでは

独り立ちできない。ページをくると………,

「わぁぁ!!あかちゃんが おかあさんの うんこ たべた!」。

子どもが自分で草を食べて独り立ちできるには,母親のうんこが大切な役割を果

たしている。草食動物は草のセルローズを自分では分解できない。腸内のセルロ

ーズを分解してくれるのは腸内にいるバクテリアだ。子どもは親の糞を通して,バ

クテリアを自分の腸内に取り入れる。草食動物の糞が親から子へ命をつなぐ大切な

役目を担っているのだ。

幼児から読める写真絵本だが,ななか中味のある絵本である。

  2014,1刊  1,200円 (西村寿雄)