わたし好みの新刊    201411

 

『ダーウィンガ見たもの』ミック・マニング/ブリタ グランストロームさく 渡辺政隆訳 福音館書店

 チャールズ ダーウィン(1809 1882)の業績や生涯について書かれた本は,すでに

いくつか出版されている。しかしいずれも長文で,特別興味がないと手に取りにくい。

その点本書は,挿し絵をベースにした読みやすい体裁になっている。この本であれば図

書館などで子どももすっと手に取るのではないか。ダーウィンについてとりあえず知って

おきたいという人にもお薦めの本である。

 この本は全ページ絵で構成されている。そして,各ページには,〈手紙形式のダーウ

ィンの手記〉と,簡単な〈コラム形式の解説〉とがある。二通りの話が交互に展開され

ていく。さし絵に浸りながら,ダーウィンの心の内と,ダーウィンの仕事をあわせて読み

取っていくことが出来る。

 ダーウィンのお父さんはダーウィンを医者にしたくて大学に入学させるが,ダーウィン

は手術の現場を見て医者には向かないと思い悩んだ。ついに大学を替えてしばらくは昆

虫採集にあけくれた。そのような時に,運良くビーグル号という世界一周の船に乗船する

話が迷い込んだ。ビーグル号は,イギリスから大西洋を南下して南アメリカ南端を周り,

ニュージーランド,オーストラリアからアフリカ南端を回りイギリスに帰る大航海になった。

1831年に出航して1836年に帰港する。航海中,特に南半球の島々も巡り,北半球とは

全然違う地球環境や,今までに見たことのない数々の生き物に目を見張る。その間に

「地球上にはどうしてこんなにも多種類の生物がいるのだろうか」「これらの生物は同

時に生まれたのだろうか」と疑問を持つようになる。帰国して「人間も,ほかの動物か

ら進化して今の姿になったのだ」と考えるようになる。〈進化論〉〈種の起源〉誕生の

経過が楽しく読める本である。            2014,6刊  1,500

 

『カヤネズミの本』   畠 佐代子著   世界思想社 

 ほんの手のひらに載るような日本一小さいネズミが日本の河川敷などに棲んでいる。

カヤネズミである。そのカヤネズミの本が久々に若手研究者によって出版された。1988

に白石哲さんによる『カヤネズミの四季』(文研出版)が出ているが,今回のようにカヤ

ネズミを専門にした研究者による本は初めてである。この本は,あえて子どもを対象にした

本ではないが,研究者の本としては珍しく読みやすい本になっている。写真も豊富で中学

生以上なら興味深く読めるのではないか。

 第1章は「カヤネズミって知っている?」である。カヤネズミの生活環境や子育て,巣

の構造などがやさしく解説されていく。カヤネズミの巣は鳥の巣とよく似ている。どこが違

うのか,オオヨシキリの巣と比べて語られている。第2章は「フィールドワークから見るカ

ヤネズミのくらし」で,各地を歩き回って調査を重ねてこられた実績がよくわかる。カヤネ

ズミは非常に警戒心の強い動物で,草むらの小さな巣の中での様子はそう簡単に見れる

ものではない。「出巣」「採餌」「子育て」「招かれざる客」とある。いずれも写真で

証拠を示しているのがすごい。第3章は『カヤネズミと人のくらしとの関わり』である。

カヤネズミの名の由来は「萱に棲むねずみ」である。すなわち,彼らの生活の場はヨシ

(アシ)などの茅場か稲作地域の畦などである。イネの茎に巣を作ることもある。河川敷

や畦を生活の場として生きている里山動物である。第4章は「カヤネズミを取り巻く現状と

保護活動」となっている。河川敷の様子も年年変化する。近年は堤防改修などでどんどん

茅場が無くなっている。休耕田も増える中で著者たちは,「全国カヤマップ」などを作り,

市民ネットワークを立ち上げてカヤネズミの保護活動も行っている。こうした現状をより多く

の子どもたちに知ってもらいたいと思う。

わたしも,20年ほど前に淀川河川敷のカヤネズミを調査(『寝屋川の自然』寝屋川市発

1996年所収)をしたことがあり,小さなカヤネズミの姿が今も忘れられない。 

2014,2刊  2,200

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