わたし好みの新刊  201502

 

『楽しく学べる理科の実験・工作』 川村康文他/作 エネルギーフォーラム 

 小学生も手軽に作れる物理・化学系中心の実験・工作の本が出た。代表著者は,

長年理科教育に関わってこられた大学理学部の先生で,本の執筆には同じ研究室仲

14人の名前が挙がっている。物理・化学系の実験・工作というと少し手が引けそ

うだが,作り方や解説にわかりやすく工夫されている。全文にルビがふられていて小

学生でも十分に読める。

《電気と磁石》の項では「リニアモーターカーをつくろう!」「電池をつくろう!」

「燃料電池自動車をつくろう!」などがある。「電池をつくろう!」では,レモン

電池,竹墨電池などがあり「燃料電池車」もある。今はLEDがあるのでわずかな

電流も光に変換できる。《光》の項では「顕微鏡をつくろう!」「カメラをつくろ

う!」「望遠鏡をつくろう!」などがある。「顕微鏡をつくろう!」は,ビー玉を

使った顕微鏡で簡単に作れる。「望遠鏡をつくろう!」では老眼鏡のレンズを使う

アイディアもある。「万華鏡をつくろう!」では,アクリルミラーよりは安くて扱いや

すいミラー断熱フィルムを使っている。《力と運動》の項では「浮沈子」として,

横向きの魚が紹介され解説では注射器が使われている。これで浮沈子の原理がよ

りわかり易くなる。「念力振り子をつくろう!」もある。モーターを使った共振の

実験である。《地学》では,炭酸水を使った噴火体験もおもしろそう。化石のレプ

リカ作りもある。《化学》では,「輝くスライムをつくろう!」「動く真っ黒なスラ

イムをつくろう!」などがある。《生物》の項ではブロッコリーやバナナ,タマネギ

などからDNAも取り出している。加えてヒトのDNAも取り出している。いろんなDNA

比較的簡単に取り出せるのがおもしろい。全体に科学的な解説もしっかりしている。

小学校5年生ぐらいからできる物理・化学・地質・生物実験の集大成本である。

                           2014,8刊  2,600

 

『宇宙人に会いたい!』  平林久/著  学研教育出版

 昔から〈宇宙人がいるのではないか〉と多くの人が夢を描いてきた。この広大な宇宙,

どこかに宇宙人がいてもおかしくはない。「まだ地球以外で生き物は見つかっていませ

んが、科学の進歩とともにますます地球以外の星に生き物が発見される期待が高まって

います。あなたと同じように、私も宇宙人に出会ったことはありません。ですが、私たち

人類は、いつか、どこかで宇宙人と出会えると信じています」と〈はじめに〉で書かれ

ている。宇宙人を見つけようと毎日天体とにらめっこしている科学者が著者である。

いったい,どのような手段で宇宙人を捜し求めているのだろうか。

宇宙人をさぐる手段は電波である。著者たちは電波望遠鏡を駆使しながらはるかかな

たからやってくる微弱な電波を日夜さぐっている。著者のような電波天文学者は,ただ

宇宙からの電波を手をこまねいて探っているだけではない。地球から電波を出して宇宙

人の返事を待っている。気の長い話だ。すでに1974年にはアメリカの電波天文学者が

ヘルクレス座の球状星団にメッセージを送ったと書かれている。しかし,その電波を宇

宙人が読み取ったとしても地球に返事がもどってくるのに5万年はかかるという。日本

の科学者も1983年にわし座のアルタイルに向けて絵や記号のシグナルを送っている。

こちらは,うまくいくと2017年には返事がくるかもしれないと書かれている。

 「宇宙人はどんな姿をしているの?」「宇宙人と地球人は言葉が通じるの?」などの

質問にもそれなりの答えが出されている。生命の起源についても書かれている。特別な

電波望遠鏡で宇宙にただようアミノ酸をさぐっているという。加えて宇宙空間での原子誕

生の話にも言及している。

地球発の楽しい夢物語がちりばめられている本である。   2014,7刊 1,300

 

                 「新刊案内2015,02」