わたし好みの新刊    201503

『まんが 恐竜の世界へ』  伊東章夫/作  真鍋真監修 新日本出版社

「科学の世界へイメージ豊かに導いてくれる」という観点から「まんが」を取りあげた。

「まんが」は今でこそ児童書の一分野として大きく位置付いているが,半世紀前は肩

身の狭い出版物だった。『鉄腕アトム』や『はだしのゲン』などが出て徐々に書物と

しての真価を発揮するようになった。そのころ科学漫画として登場したのが井尻正二

/作,伊東章夫/絵の漫画『いばるな恐竜ぼくの孫』シリーズ(新日本出版社)だっ

た。当時,わくわくして読んだ記憶がよみがえる。

さて,今回伊東章夫さんの作で新たに恐竜漫画が出版された。恐竜の学問的研究は

年々進み,とどまるところがないほどであるが,恐竜研究の第一人者真鍋真さんの監

修なので内容的にも信頼できる。この本は,細かな観点は別にして恐竜の生きざまが

楽しめる本である。

物語は3人の小学生が恐竜博物館を見学することから始まる。恐竜博物館を見ている

うちに3人は思わぬ洞窟に紛れ込む。そこは約一億年前の世界だ。突然大型恐竜が

現れる。3人は肉食恐竜ティラノサウルスに追いかけられて命からかがら逃げ出す。

次は,子育て中のマイアサウルスと遭遇,そこへマイアサウルスの子どもを狙うトロ

オドンがやってくる。3人は,マイアサウルスの子どもを助けるためトロオドンと闘うが,

肉食恐竜の胸の内も知る。音を出して子どもに身の危険を知らせるカモノハシ竜に遭

遇する。見とれていると,肉食ワニのディノスクスが三人に襲いかかってくる。やっと

の思いで3人は現代に脱出成功,人間社会にもどれたという話で終わる。最後に真

鍋博士の解説がある。            2014,10刊  2,000

 

『海がわかる57のはなし』  藤岡換太郎著  誠文堂新光社

著者の藤岡換太郎さんは,「しんかい6500」に51回も乗って海底調査をしたという

海洋学の専門家であるが,退職後出版された大衆向きの科学書は非常に読みやすい。

『山はどうしてできるのか』『海はどうしてできるのか』(講談社ブルーバックス)

などがある。専門家にしては珍しく文章がなめらかで平易である。

この本では,その藤岡さんが海にまつわる話をコンパクトにまとめている。題名にある

ようにこの本には57の話が収められている。

例えば「海の水はなぜしょっぱいの?」がある。現在も2通りの考えがあるようだ。塩

水はもともと海の中にあったという考え方と陸から運ばれてきた「塩」によって塩辛くな

ったという考え方である。この考えでは,海水濃度が徐々に濃くなっていくのだろうか。

他に「水はどのように地球を旅するのか」「海と陸の境界はどこ?」「世界一高い山

は海の中にある」「地球内部では、個体が煙のように移動する」「生物相に富んだ、

にぎやかな深海」「海洋深層水がスゴイ理由」「地球の歴史46億年と海の変化」

「海はこれからどうなるの?」など,57項目の話がある。最後の「「海はこれから

どうなるの?」が気になるところ。本文を紹介すると

「………。もうひとつ別のシナリオがありますが、それはもっとも恐ろしい話です。太

陽は現在核融合反応によって水素からヘリウムをつくっています。すべての水素がヘリ

ウムになってしまうと、太陽の温度はもっと上がってその大きさがどんどん増していき

〈赤色巨星〉と呼ばれる星になります。……。地球が飲み込まれる前に気温や水温が

上昇し、海はすべて干上がり、地球は水星のように陸だけの星になります。…」とある。

水の惑星・地球はいつまで続くのだろうか。 

2014,9刊 1,300円(西村寿雄)

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