わたし好みの新刊 2016年3月
『さかなだって ねむるんです』伊藤勝敏/写真 嶋田泰子/文 ポプラ社
写真の迫力が全ページに出ている「ふしぎいっぱい写真絵本」シリーズの一冊である。
まあ,こんな〈寝袋〉を作って眠る魚はまずいなくて,たいていは,水中での微妙な
違いが見極めのポイントらしい。そこを写真家はうまくキャッチしている。
まず出てくるのが「モヨウフグ」というふぐ。ダイバーが手でさわっても動かない。
〈ねむってからだをやすめている〉のだそうだ。次は,海底にへばりついて動かないヒ
ラメ。でも,夜の海も安心して眠っておれない。じっとお休み中のふぐの仲間が,横で
目を覚ましたトラウツボにパクリと飲み込まれてしまう。中には居眠り中に,砂の中に
眠っていた魚に食べられてしまう魚もいる。眠ることは,魚にとっては身の危険と裏腹
である。海の生き物の宿命だろうか。
もちろん,眠る魚たちは,それなりに危険回避術を心得ている。眠るときには,周り
の色に化けるとか,サンゴなどの隙間に潜り込むとか,砂中にもぐりこんだりと,なに
かと防御の術は心得てはいる。そのきわめつけが表紙のハゲブダイ。こちらは,自前の
カプセル作るというのだから高等術だ。もちろん,回遊魚などはそんな悠長なことをし
ていられない。こちらは,泳ぎながら眠るという特技でしのいでいる。
魚の眠り様も多種多様,知らない海中散歩が楽しめる。
2015,09刊 1,400円
『ミミズの謎』 柴田康平/著 誠文堂新光社
こちらは,〈生き物の謎にせまる本〉シリーズである。このシリーズは,身近な生き物
研究のきっかけや,生き物の謎にせまる謎解きの楽しさが読み取れる。この本もそのよ
うな一冊である。
第1章は「1.ミミズ研究の始まり」で始まる。ミミズは,しばしばお目にかかるとは
2章は「2.光るミミズを求めて」となっている。ミミズが光る?蛍の間違いではと思
われなくもないが,ここでは,地上小動物発光体の謎解きが続いていく。3章は「3.ミ
ミズを研究してみよう」で,ミミズ研究の手ほどきが書かれている。この本を読んで,若
いミミズ研究者が出てくるといい。合間には「ミミズって鳴くの?」「いろいろなミミズ」
などのコラムが,ちりばめられている。
2015,11刊 1,500円