わたし好みの新刊   20165

『恐竜は今も生きている』   富田京一著  下田昌克絵   ポプラ社

 とにかく派手なカバー表紙が目にとまる。いくら,絵本といえどもでデフォルメしすぎ?いや,
まんざらそうでもなさそうだ。帯には「羽毛をつかって大繁栄した恐竜たち。そう、今も恐竜は絶
滅していないのだ!」とある。そもそも,本のタイトルからして『恐竜は今も生きている』で,ここ
十数年の恐竜研究の成果をかなり大胆に取り入れた本である。著者は,かねてからの爬虫類
研究家で,最近では恐竜
CG制作などでも活躍されている人である。

 とにかくページを繰ってみよう。小鳥に混じって,ふさふさ毛で被われた鶏のような,猫のよう
な動物が居座っている。「この動物はいったい何者でしょうか」と問われるが,まずは見当がつく
まい。次のページをめくると「うわっ!」。じつは,これが大型恐竜ティラノサウルスの姿なのだ。
重さ
6トンはある最大級の肉食恐竜,20年ほど前の恐竜イメージ図とはまったく異なった「恐竜」
の出現である。これは
1996年以降に発見された羽毛恐竜化石発見が引き金になっている。
1章は「恐竜ってどんな生きもの?」,ここにも,羽毛をまとった獣脚類が描かれている。
2章は「羽毛を持った恐竜のくらし」で,羽毛のついた恐竜化石発見のようすや,恐竜が羽毛を
もつことによる効能が描かれている。第
3章は「恐竜、空へ行く」。そもそも恐竜の骨格が鳥類と同
じで空洞造りだという。空を飛びたつのも時間の問題だった。今から
6500万年前に恐竜絶滅が起
きたとされているが,どっこい,小型の空飛ぶ恐竜「鳥」は生き残った。スズメやカラスも恐竜と思
えば,今も恐竜は生き残っていることになる。これからの恐竜研究がますますおもしろくなりそうだ。
                                           
2015,11刊 1,300

 

『ぼくのマメ図鑑』 (ちしきのポケット) 盛口 満/絵・文      岩崎書店

 いつもすっきりとした挿し絵で,動物や植物のイラストを描いている盛口満さんの本が久しぶりに
出版された。『ぼくのマメ図鑑』という見方もおもしろい。「マメ」という言葉は,食物として食べている
人間側の言葉で,植物の視点で言えば〈種〉である。植物にとっては子孫を残す大切な〈種=命の
たね〉であるが,その大切な〈命のたね〉を,ちゃっかりいただいているのが人間(動物)である。それ
だけに,「マメ」という言葉には親しみと感謝の気持ちがただよってくる。本書は,そうしたマメのオン
パレードだ。マメにもこんなに種類があったのかと,絵を見ているだけでも楽しくなってくる。

 まず見開きの「マメ図鑑」,大小さまざまなマメが並ぶ。著者が小学生以来心に焼き付いていたと
いう長経
6cmほどの「モダマ」から,スズメノエンドウ,カラスノエンドウといった数mmの野草マメま
で並ぶ。次ページからも見開きで「個性いろいろ 黒・白・マダラ…」「豆といったら」「アンコの中身」
「いつ食べる?」「のばすともやし?」「八百屋さんのさや」「これもマメ」「これもマメ?」と続き「地下の
ひみつ」「野原のマメ」へとつながる。「マメ食う虫も好きずき」もある。ふつうマメは固い殻をかぶって
いるので虫たちの食用には不向きだが,それでもしたたかに豆を食う虫もいる。「花・はな・ハナ」では,
植物学としてのマメの花が描かれている。マメ科の花は蝶型が特徴だが,ネムノキなどちょっと変わ
った花もある。「長い・ひらたい・つるつる・ぐるぐる」では,個性的なさや(実)の姿が大胆に描かれて
いる。「ジャングルのマメ」「世界一のマメ」「あつめてみよう」「そだててみよう」で終わっている。著者
の長年の趣味が凝縮されたような本である。           
                                       
2015,11 刊 1,500  (西村寿雄)

                       
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