『恐竜は今も生きている』 富田京一著 下田昌克絵 ポプラ社
とにかく派手なカバー表紙が目にとまる。いくら,絵本といえどもでデフォルメしすぎ?いや,
まんざらそうでもなさそうだ。帯には「羽毛をつかって大繁栄した恐竜たち。そう、今も恐竜は絶
滅していないのだ!」とある。そもそも,本のタイトルからして『恐竜は今も生きている』で,ここ
十数年の恐竜研究の成果をかなり大胆に取り入れた本である。著者は,かねてからの爬虫類
研究家で,最近では恐竜CG制作などでも活躍されている人である。
とにかくページを繰ってみよう。小鳥に混じって,ふさふさ毛で被われた鶏のような,猫のよう
な動物が居座っている。「この動物はいったい何者でしょうか」と問われるが,まずは見当がつく
まい。次のページをめくると「うわっ!」。じつは,これが大型恐竜ティラノサウルスの姿なのだ。
重さ6トンはある最大級の肉食恐竜,20年ほど前の恐竜イメージ図とはまったく異なった「恐竜」
の出現である。これは1996年以降に発見された羽毛恐竜化石発見が引き金になっている。
第1章は「恐竜ってどんな生きもの?」,ここにも,羽毛をまとった獣脚類が描かれている。
第2章は「羽毛を持った恐竜のくらし」で,羽毛のついた恐竜化石発見のようすや,恐竜が羽毛を
もつことによる効能が描かれている。第3章は「恐竜、空へ行く」。そもそも恐竜の骨格が鳥類と同
じで空洞造りだという。空を飛びたつのも時間の問題だった。今から6500万年前に恐竜絶滅が起
きたとされているが,どっこい,小型の空飛ぶ恐竜「鳥」は生き残った。スズメやカラスも恐竜と思
えば,今も恐竜は生き残っていることになる。これからの恐竜研究がますますおもしろくなりそうだ。
2015,11刊 1,300円
『ぼくのマメ図鑑』 (ちしきのポケット) 盛口 満/絵・文 岩崎書店
いつもすっきりとした挿し絵で,動物や植物のイラストを描いている盛口満さんの本が久しぶりに
出版された。『ぼくのマメ図鑑』という見方もおもしろい。「マメ」という言葉は,食物として食べている
人間側の言葉で,植物の視点で言えば〈種〉である。植物にとっては子孫を残す大切な〈種=命の
たね〉であるが,その大切な〈命のたね〉を,ちゃっかりいただいているのが人間(動物)である。それ
だけに,「マメ」という言葉には親しみと感謝の気持ちがただよってくる。本書は,そうしたマメのオン
パレードだ。マメにもこんなに種類があったのかと,絵を見ているだけでも楽しくなってくる。
まず見開きの「マメ図鑑」,大小さまざまなマメが並ぶ。著者が小学生以来心に焼き付いていたと
いう長経6cmほどの「モダマ」から,スズメノエンドウ,カラスノエンドウといった数mmの野草マメま
で並ぶ。次ページからも見開きで「個性いろいろ 黒・白・マダラ…」「豆といったら」「アンコの中身」
「いつ食べる?」「のばすともやし?」「八百屋さんのさや」「これもマメ」「これもマメ?」と続き「地下の
ひみつ」「野原のマメ」へとつながる。「マメ食う虫も好きずき」もある。ふつうマメは固い殻をかぶって
いるので虫たちの食用には不向きだが,それでもしたたかに豆を食う虫もいる。「花・はな・ハナ」では,
植物学としてのマメの花が描かれている。マメ科の花は蝶型が特徴だが,ネムノキなどちょっと変わ
った花もある。「長い・ひらたい・つるつる・ぐるぐる」では,個性的なさや(実)の姿が大胆に描かれて
いる。「ジャングルのマメ」「世界一のマメ」「あつめてみよう」「そだててみよう」で終わっている。著者
の長年の趣味が凝縮されたような本である。
2015,11 刊 1,500円 (西村寿雄)
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