私好みの新刊    20174

『元素シティヘGO!』 宮村一夫/監修 ほりたみわ/イラスト 実務教育出版

 《すべてのものは原子でできている》ということからすると,原子・分子に関する話は

もっと身近にあっていいのだが,子どもたちが親しめる本としては少ない。最近ニホニウ

ムが認知されて,少しは原子の話も話題に上るようになった。そのタイミングを見てなの

かこの本が出た。大胆なキャラクターをそれぞれの原子に見立てて,周期律の同列原子を

一つのファミリーとして各原子を紹介している。アルカリ金属ファミリー,アルカリ土類

金属ファミリー,亜鉛ファミリーなどとしてまとめている。個性的なイラストと口語の語

り口で,子どもたちにも親しみやすいスタイルになっている。各原子の紹介も簡潔で読み

やすい。「Ca」では「カルシウムさんは骨や歯の主な成分になる元素として有名じゃ。

地殻にある金属の中では、アルミニウムさんと鉄さんの次にたくさん存在しておる。

石灰岩という岩石の中に、化合物となってたくさんおるんじゃ。……」

と,こんな調子で紹介されている。各原子には基本データとして,常温の状態,原子量,

密度,融点,沸点,発見(年)などは書かれている。また,多くの原子には化合物の紹介

もある。「Ca」では,炭酸カルシウムが取り上げられていて「カルシウムさんと炭素さん、

酸素さんの化合物じゃ。山口県の秋芳洞などの有名な鍾乳洞は…… 」などと解説文がある。

この本で一つ物足りないのは周期表の記載がないことである。やはり最初かまとめで周期

表はほしい。周期表があることによって全体像が見えてくる。

 この本はなんとしても大胆なイラストに強くひきつけられそうなので子どもたちの目を

引きやすいと思われる。図書館などでは子どもたちはどう反応するだろうか。この本の話

がきっかけになって,かこさとし著『なかよしいじわる元素の学校』,板倉聖宣著『もしも

原子が見えたなら』,板倉聖宣著『身近な分子たち』,原田佐和子他文『変身のなぞ』など

に関心が広がればいい。

なお,この本と似たスタイルの本はすでに藤田千枝訳『科学キャラクター図鑑 周期表』

が出ている。こちらも手軽に楽しめる。          20169  1,400

 

『鳥のくらし図鑑』  おおたぐろまり/絵・文  上田恵介/監修  偕成社

野鳥の生態に関する本は従来からたくさん出ている中で今回この本を取り上げた。カバー

表紙内側に「スズメや、カラス、ハト、ムクドリ。あなたが野鳥をみかけたとき、鳥たちは、

なにをしていましたか?/鳴いたり、食べたり、飛んだり……/鳥たちがしていたことは、

きっと、/その鳥のくらしの大切な場面です。/この本は、春夏秋冬、一年を通した/

野鳥の生活がわかる、絵本図鑑です。/鳥のくらしを、のぞいてみませんか。」

と呼びかけている。個々の身近な野鳥の一年間のくらしが一目で分かるようにまとめられて

いる。また,各所のイラストも表情豊かで分かりよい。

最初に見開き2ページを使って「鳥たちの一年」が描かれている。春夏秋冬各季節の野鳥

のおおまかな生活様式がまとめられている。「春」では「鳥たちが、いちばん活発な時期。

冬鳥たちが北国へ帰っていきます。夏鳥が日本へ、繁殖のために渡ってきます。あちらこち

らから、鳥たちの歌声がきこえます。求愛の歌、なわばり宣言の歌。……」等と解説が入る。

あとは,生活の場面毎にわかりよい挿絵と共に,各野鳥の一年間の生活をうまく一ページに

収めている。ページの真ん中にはその野鳥の特徴や食べ物の様子を簡単書き,ページ周辺に

各月のその鳥の生活の様子をちりばめている。

「ヒヨドリ 日本全国で一年じゅうみられる。/平地や底山地から、高い山にまで生息。

/人家近くや林にすみ、市街地でもくらす。…雑食で、木の実、花のみつ、野菜の葉、

カエルなどを食べる。ヒイヨロロ、ピーピーなど、いろいろな鳴き方をする」

とあり,各月での生活の様子が描かれている。渡りについての記述もある。

とにかくページを繰っていくと身近な野鳥たちの一年が一目でわかるのがいい。

この本の監修者上田恵介さんは「この本には、ふだん出会うことの多い身近な鳥たちについ

て、日本にいるときもいないときもふくめ、その1年の生活が生き生きと描かれています」

と紹介している。                   201611月 2,000 

 

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