私好みの新刊  201711

『皮ふの下をのぞいてみれば…』

カレン・ラッチャナ・ケニー/文   六耀社

 体の中の仕組みをかなり大胆な絵で描き,解説もそこそこ簡潔にまとめている。

ふつう,体内の図となるとどうしても専門的なことが気になり細部にまで書かれ

るのがふつうである。それに比べて,この本は簡潔なので低学年児の読み聞かせ

にいいかもしれない。タイトルは『皮ふの下をのぞいてみれば』となっている。

「皮ふの下をのぞく」という発想がおもしろい。2ページ見開きの縦長の本であ

る。

 最初は散歩で汗いっぱいの場面。ここで「からだは、すごい機械です。たくさ

んの装置が協力しあって、いろいろなはたらきをします」と書き「からだのなか

がどうなっているのか、のぞいてみたいと思いませんか?」と問いかける。まる

でロボットの中をのぞく感覚だ。

 まずは体内の概略図が出る。血管や筋肉,骨,内臓のなどが描かれて「血管は、

高速道路のようなはたらきをします」とある。次は皮膚のクローズアップの絵が

あり表皮、真皮、皮下組織などの解説が入る。さらに大胆なかみの毛の挿し絵,

毛幹,毛包,毛根,毛脂腺など大柄な絵が続く。次は血管の概念図を描いて

「血液は、血管の「超高速道路」を通っています」と書き動脈,静脈,毛細血

管の話がある。

 次に「息をする機械」「ポンプの力で血液をぐるぐるまわせ!」「栄養

(エネルギー)工場」「ごみはすてましょう」「メッセージは、とどきました

か?」「からだを、いきいきとコントロールするホルモン」「骨と筋肉」と体

の機能についての話は続く。最後に「人間の体は、外がわから見ても、すごい

はたらきをする機械に見えますが、内がわだって、すごいしくみを持った機械

であることを、みなさんは、わかったでしょうか!」と結ぶ。人体は精密機械

の集合体のように説く。人体には機械を超えるすばらしい機能もあるのだが…。

                       20175月 1,850

 

『鉱物と宝石』 (ジュニア学習ブックレット) 松原聰監修 PHP研究所 

 近年の子ども向けの本は美しい写真等で迫力いっぱいに編集されていること

は多いが,ますます高価になっている。それらに比べるとこの本は,低価格で

ありながら鉱物と岩石について全体的な知識が得られるように編集されている。

それらを評価してここに取り上げた。しかし,内容的には記載のあいまいさや

誤解を生む表記,写真の不明瞭さなど気になることもある。監修者の松原さん

は鉱物界の大御所なのだが,どこまでチェックされているのか気になる本では

ある。

 構成は,第一章「鉱物のでき方と性質」,第二章「鉱物と宝石のふしぎ」,

第三章「岩石をつくる鉱物」と分かれている。まず,鉱物に焦点を当てている

のがこの本の特徴である。鉱物は見た目で美しいこともあり子どもたちの興味

は引きやすい。ここでは元素記号が表記されて分類されているが,元素につい

ては解説がいる。結晶の形も興味ある内容だが,そもそもなぜ結晶ができるの

か基本的な説明がほしい。「地球のなかのしくみ」のマントルの赤い図は,マ

ントル全体が溶けたマグマのような誤解を生む。雲仙普賢岳の被害の話では火

砕流の言葉は入れてほしい。火砕流は火山災害として知ってほしい基本的な事

柄である。「鉱物はこうしてできる!」のペグマタイトの黒い線図はわかりに

くい。巨晶花崗岩の感じが出ない。第二章「みがくと宝石になる鉱物」の話や

「宝石好きだった古代人」「あやしく光る鉱物のなぞ」「鉱物になった生き物

たち」などは楽しく読める。第三章は「岩石をつくる鉱物」となっている。

個々の岩石の写真はもう少し大きい方が見やすい。「土や砂などがたい積して

できた岩石」にチャートも入っているが,チャートについてはもう少し多様な

紹介があるといい。少し注文が多くなった本ではあるが,子どもにも手にとっ

てほしい一冊である。            20175   600

 

             新刊紹介11