私好みの新刊 20189

『生きものとつながる石ころ探検』 盛口 満/文・絵 少年写真新聞社

 ちょっとユニークな石ころの本が出た。石ころの本と言っても,もともと

生き物にたけておられた盛口満さんならではの視点が背景にある。「はじめに」

に,盛口さんはこう書いている。

「石ころなんてどこにでもある? だから、いろいろな生きものが石を利

用しています。人間も昔から石を道具や建物の材料にしてきました。

中には、石をつくる生きものもいますし、死んでから石になった生きもの

もあります。ふだんとちょっとちがったまなざしで、石ころ探検に出発し

よう!」

というわけで、石ころと生きものや人とのかかわりに多くのページをさいている。

 まず初めは〈石ころのいろいろ〉。色も形も手触りもちがいますと書いている

が,イラストではちょっと質感が出にくい。石の中に見える粒のあるなしが見え

るとさらにいいのだが。鉱物と岩石が混在しているが〈色くらべ〉はビジュアル

に描かれている。〈飛ぶ石・うかぶ石〉にある黒曜石は飛ぶ石?浮かぶ石? 海

岸での〈砂図鑑〉はおもしろいが石と砂が混在している。海外の砂では背景の説

明がほしい。〈生きもののつくる石〉ではサンゴばかりではさびしい。〈竜の石〉

として恐竜の骨や歯の化石が並び,〈サメの歯図鑑〉ではいろんなサメの歯が並ぶ。

石と生きる〉という見方が新鮮でいい。石も場所によっては生きもののすみ

家になっている。石の下にも砂漠の中にも生きものがすんでいる。〈虫の石〉は

石で巣を作る虫の話が描かれている。石をうまく利用してきた生き物もいる。

石をのみこんで〈胃の中の石〉として利用しているのが鳥である。人もまた石と

ともに生きてきた。〈ストーンヘンジ〉や石器が描かれている。焼いて固くした

〈石づくり〉の話もある。装飾品として加工した石の絵もおもしろい。〈食べる石〉

〈夕飯の石〉と続いて最後は〈足下の砂〉でしめくくり。ビーチの砂は地球の歴

46億年の集大成というわけか。      2018620日 1,800

 

『カラスのジョ−シキってなんだ?』 

柴田佳秀/文 マツダユタカ/絵  子どもの未来社   

 今年の猛暑には人間様もうんざり、そういう時はこの本でも読んでカラスを見

直すか。〈おもしろ生き物研究〉シリーズとしてカラスの習性について簡潔にまと

めてくれている。○×クイズにも使えそう。野鳥の中でもカラスはしばしば人の

口に上がる。その場合たいていは「カラスは凶暴だ」とか「カラスは追い払った

人をおぼえている」とかカラスを迷惑鳥として語られる。カラスはそれだけ人の

生活に近い証拠だが,これら人の目から見たカラスの行動は本当だろうかと著者

は問いかけている。日本鳥学会会員で自然観察講師も務める著者がいろいろカラ

スについて語っている。カラスの本性を知るためにも,カラスのジョーシキを信

じている人にもお薦めの一冊である。

 第一章は「カラスのジョウーシキ」と題してカラスの主な習性を紹介している。

〈旅ガラス〉もいる。季節によってロシアや中国にまで移動するワタリガラスや

ミヤマガラスもいる。第二章は「カラスのセーカツ」として,カラスの食べ物や

カラスの一日の紹介などがある。カラスはマヨラーだとか。なので石けんも大好

き。幼稚園の手洗い場事件もカラスが食べ物として持ち去っていた。第三章が

「カラスのウワサ」。ここに,いろいろな人の噂話が紹介されている。「カラスは

追い払った人をおぼえている」「カラスは凶暴だ」「カラスがさわぐと地震がくる」

「カラスはゴミの日をおぼえている」「カラスは人の言葉を話せる」「カラスは水

道の蛇口をあけて水をのむ」「カラスは自動車を利用する」「カラスは道具をつく

る」「カラスは神様だった」など,14項目の噂話が紹介されている。中にはカラ

スの本性をついているものもあるが,多くは人間の思い込みのようだ。最後に

「カラスのことわざ」が紹介されている。「カラスの行水」などカラスにちなん

だ諺もいくつか見つかる。カラスが人間とのかかわりの多い野鳥である証拠でも

ある。

最後に著者は「カラスの気持ちになってみつめているとカラスのすばらしい姿

が見えてくる」と書いている。       2018111日 1,400

 

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