私好みの新刊 20195

『みずとはなんじゃ? 』 かこさとし作 鈴木まもる絵  小峰書店

 かこさとしの遺作となった本書、長年の加古さんの「水」への思いがまとめ

られた本ともいえる。加古さんの本を振りえると『だむのおじさんたち』から始

まって『かわ』『海』『地球』『あまいみずからいみず』と水の姿がテーマになって

いたと付録の解説にある。「水はわたしたちの命を保つためにも、なくてはなら

ないものです。そんな水のことを子どもたちへ伝える本を・・・と、長年かこさ

としは水の絵本の企画を考えていました。」と同解説書にある。加古さんは工学の

専門家でもあったので、この本の企画は加古さんならではの願いでもあった。

本書は 

「あさ おきて、かおを あらう みず。うがいを したり、のんだりする みず。

  みずは、いったい どんな ものなのでしょうか ?

という問いかけから始まる。最初にふだんの生活や遊びで水を使っている場面がた

くさん登場する。お料理をしたり、プールで遊んだり、やかんで水を温めたり、庭

に水をまいたりのシーン、冷蔵庫で氷を作る場面、水に浮かぶ氷の姿、池の氷と水の

いろんな姿が出てくる。これらをまとめて、水のはたらきの一つとして、〈水はにん

じゃのように、やくしゃのように姿を変えるもの〉としてまとめている。水のはたら

きの二つめとして、私たちかが食事をするシーンから、生物体内に含まれている水量

イラスト、水を飲むシーン、排せつシーンを描き、運び屋としての水を語っていく。

水は〈りょうりにんやいしゃのような働きをしている〉とまとめている。次に水のは

たらきの三つめとして海の場面から水蒸気、雲、雨の場面、緑の地球の場面、夜の場

面などが出てきて、〈水は地球にとってクーラーのような、ふとんのような働きをして

いる〉としめくくる。最後に、いつまでもきれいな水として使えるように多くの生き

物が棲む海を描いて終わっている。水の大切さを思い起こす絵本である。絵は、晩年

の加古さんの依頼で鈴木まもるさんが描いている。 

      201811月刊  1,500

『月のかたち』  藤井旭 監修・写真            ほるぷ出版

 「月のひみつシリーズ」としての一冊目。この本は、古くから出版も多い天文写真家、

藤井旭さん監修となっている。編著は「オフィス303」と書かれている。藤井旭さんの月

の写真を利用して月の形をまとめられたようだ。月の姿もあまり意識していないと周期的

な変化に気が付きにくい。毎日見る月の変化を藤井旭さんの大きな写真でまとめている。

 まず初めに、大きな満月の写真が現れる。こうした月齢周期の説明で、真ん中の15

にあたる満月から始まる本は珍しい。初めにぱっと大きな月面が出てきて思わず目をすい

つけられる。読み聞かせの時でも、大きな月の写真があればちょっと堅苦しい文言も苦も

なく聞いていられる。次ページからは少し写真は小さくなるが、月齢16, 月齢17へと進む。

「〈月のうさぎ〉など、もように見立てられるうすぐらい部分は、〈海〉と呼ばれています」

と簡単な解説文が添えられている。続いて、月齢18から21まで見開きの4つの写真が並ぶ。

ここでかなり月面の変化が見えてくる。次は月齢22、下弦の半月が大きく目に入る。この

下弦の半月が南の空に見えるのは午前550分。ということはもうこれ以降は地上は明る

くなって月の姿はよほど意識しないと見えなくなる。続いて、月齢23,24,25・・と後に続い

ていくが、ふつうは昼間に見えている月には気が付かない。普通のカメラ技術では写真に収

めるのも難しい。そこをこの本では昼間の光量を少し絞って月の姿をくっきりと浮かせてい

る。異色の表現である。お昼でもくっきりと見えている下弦の月の写真が並ぶ。

いよいよ月齢0.「月のすがたは、すべてがかげになっているので見えません」として「新月」

の解説をしている。それから、月齢1,2,3・・と続く。この本は月が最も高く上った時の写真

なので、三日月も白く縦に写されている。ふだん見る傾いた三日月の姿と少し異なってくる。

最後にまた満月になって終わっている。月面変化の流れが見やすい本である。    

                    201810月刊  1,800

5月新刊紹