私好みの新刊 201910

『うまれたよ! クラゲ』  ボコヤマ・クリタ/構成・文  岩崎書店 

近年、低学年用の本が見直されている。その最先端をいくのが、この「よみき

かせ いきもの しゃしん えほん」である。すでに何冊も発行されているが、

いずれも、低学年の読み聞かせにはぴったりである。そのかわりサイズが少し

大きくなって、今はやりの画面投影と紙芝居の中間をいく。

この「クラゲ」といえば、よく海で「くらげだ」と言ってにげまわったことを

思い出す。でもここに出てくるクラゲはミズクラゲのみ。後半に、クラゲの一

生がまとめられている。

「このほんで しょうかいした クラゲは ミズクラゲという しゅるいです。

にほんの うみには ほかにも いろいろな クラゲが います。からだが 

すきとおっていて、ちいさいものが おおいので みつけにくいけれど、

どれも へんてこで ふしぎで とっても おもしろい いきものです。」

とある。

たしかに、クラゲは不思議な生き物である。あわせて、「みずくらげのくらし」

が書かれている。「みずくらげ」はいつも、同じような形をしているかと思いき

や、形はうんと違う。小さな卵の時期もある。死ぬと水にとけて消える。骨が

ない生き物だからか。卵はわかるとして、「ポリブ」が出来て、その「ポリブ」

が「いくつにも分かれて増えていく」とか。「ストロビラ」と言われている。

その「ストロビラ」が、身体がくびれてきて「一匹がばらばらに分かれて泳ぎ

出す」とあるから、これがやっかいである。卵がさらに増える格好である。

クラゲのいろんな種類も紹介されている。「ハナガサクラゲ」に「ウリクラゲ」、

これも「クラゲ」かと思わせられる。「アントンクラゲ」、これは、人をさすと

言う。クラゲの実体がわかる本である。

写真も飼育中に撮られたものか、圧巻で大写しである。        

 20193月刊  2,200

 

『珪藻美術館』(たくさんのふしぎ6月号)  奥修 /文・写真   福音館書店

  ぱっと表紙を見ると、「ちいさな・ちいさな・ガラスの世界」と、記されている。

美しいせかいだ。だれしも、目をうばわれる。しかし、これは顕微鏡の世界。

この珪藻を集めてここまで仕上げるのが大変な作業をようするので並大抵はない。

その苦労話が書かれている。 まず、野外での採集、

「珪藻がとれたかどうかは、顕微鏡でのぞいてみるまでわかりません。」

とある。

なかには、まったく無い場合もある。珪藻らしきものはたくさんあるが、珪藻と

見極めるのが大変そう。なかには、動物もミドリムシ類もいる。でも、意外と珪

藻はいるようだ。川や池、田んぼにもいる。やっとの思いで珪藻を見つけた写真

が出る。珪藻には死骸もある。生き物が死んでも、長く腐らないで残っているの

も珪藻の特徴だからだ。ここでひとやすみ、珪藻の説明がある。「藻のなかまのな

かで、珪酸質(ガラス質)の殻をもつものを、珪藻とよんでいます。」とある。珪藻が

ほかの藻よりも圧倒的に増える理由の一つに、この珪藻がガラスの殻を作ること

にあるようだ。「たくさん増え、酸素を作り、えさと なることで水の中の生き物

をささえている、とてもだじな藻が、珪藻なのです。」とある。珪藻という生き物は

18 世紀には発見されていたようです。性能の良い顕微鏡が発明されて、ますま

す珪藻にはまった人がいたようだ。二枚のガラス板の間に閉じ込めて、珪藻を見る

「珪藻アート」が出現した。著者もその一人となったようだ。美しい「珪藻アート」

はまだまだ続く。とはいえ、この珪藻アートに仕上げるのに努力もいる。0.3mm

 ほどの世界、一つ一つ拾い上げるのも大変そう。息もできない。特殊な器具を作

って、珪藻集めをされているようだ。珪藻プレパラート作りの話がつづく。

世の中には、カルシウム(Ca)またはケイ素 (Si) を取り入れている生き物がいる。

人間や貝類はカルシウム(Ca)だが、本書の珪藻や放散虫は殻にケイ素 (Si) を取り

入れている生き物である。ケイ素は、ガラスとも言われとても固い。岩石のチャ

ートはこのケイ素 (Si) 質生き物の殻が深海で集まったものである。

                 20196月刊   713

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