私好みの新刊 202002

『ツノゼミ』   丸山宗利・小松貴・知久寿焼/写真・文   あかね書房

 昆虫の世界にはさまざまな種類がいる。なかでも、この「ツノゼミ科」
に属する
昆虫はめったにお目にかかれない。その希少な種に目をつけたの
が著者たちである。
日本では数種が記録されている程度で、昆虫図鑑にも
1,2種程度が書かれている種類である。ところが意外にも外国には多いらしい。
そこに目を付けた著者たちが、
この本でたくさんのツノゼミを美しい写真
で紹介してくれている。

 最初にツノゼミについて書かれている。日本でも、都市公園や緑地公園
等で見ら
れるという。「細い枝から若い枝が出る付け根あたりにアリが来
ていれば、なんら
かのツノゼミの幼虫がそこにいるかもしれません。」と
ある。さて、ツノゼミとは
どんな生き物だろう。最初のページに大きな写
真が出る。日本で代表する
「ツノゼミ」で体長は7mm程度。小さくても、
頭には立派なツノがある。羽は
セミと似た格好である。次に、ツノゼミの
幼虫とアリの写真が出る。ツノゼミに
は「甘露」があるようだ。幼虫はそ
のあまいおしっこを出してアリにあげている
そうだ。ここにも共生関係が
ある。さて、これからがツノゼミの写真が次々と映
し出される。
 まずは、数少ない「日本のツノゼミ」。数は少ないとはいうものの次

ページと合わせて8種類のツノゼミが映し出されている。まだツノが伸び
きって
いない種ある。いずれも4mm~7mm程度の小さい生き物だ。ここで
は、ツノゼミ
の体についても簡単な解説もある。次からは、外国勢のツノ
ゼミの写真がたくさん
並ぶ。羽化の様子も記録されている。一口にツノゼ
ミと言っても、色や形も様々。
立派なツノの持ち主もいるしツノが見えな
い種もいる。黒いのもいるし白いのも
いる。いろいろなツノゼミの姿が堪
能できる。

 最後に、ツノゼミの捕まえ方などの説明もある。 20197月 1,500

 

『カガク力を強くする!(岩波ジュニア新書) 元村有希子/著  岩波書店

  著者は長年新聞記者をしているジャーナリスト。小さい時は文系志向だった
うだが、科学のおもしろさ取りつかれて、科学系の記事を書き続けている。
そして、
これからの人に大切な生き方は「カガク力」だという。どうしてなの
か。
著者のことばを拾うと

「・・科学のことを毛嫌いしたままではすまない世の中になっているのも事

実です。〈科学なんて難しい話は、科学者や技術者に任せておけばいい〉とい

う大人もたくさんいますが、どうでしょうか。科学や科学の知識を基に生まれ

た技術が、私たちの暮らしに深く浸透し、暮らしを大きく変えています。これ

からの時代、科学・技術とどう向き合うかによって、その人の人生は大きく

左右される、と私は思います。」

と述べて、甲状腺ガンになった著者があたふたせずに今も生きている状況を書い

ている。そういえば、今の私たちはあまりにも科学技術の成果によって生まれた

製品に囲まれていることが多い。体に関しても、病院にたよるしかない。そんな

世の中で生きる以上、「カガク力」を身に着けていないととんでもない誤った判断

に陥るかもしれない。著者は、「カガク力」とは疑うことだという。新聞記者に通

じるが、一つの情報を鵜呑みにしないで考えてみることだという。複雑化した世

の中、素人にはなかなか疑って考えている余裕はないのだが、それでもこれから

の人間には疑う心は大切なことだという。

 この本では様々な現代科学の成果を記した後イギリスでの著者の体験談を話し

ている。その中で、「与えられた情報を疑い、論理的に考え、自分なりに判断する

能力はイギリス人の方が上手だ」という。これからの日本人にも必要なことなの

かもしれない。そのあと、日本でのいろんな現実が紹介される。例えば、東北の

地震の時、あれだけの津波を予測できなかったと著者は書くが、予測していた科

学者もいた。要は、判断力の問題だった。原発事故問題では「不確かなことを誠

実に伝える必要があること」と書く。さらに、再生医療の問題、熱帯雨林の問題

なども取り上げている。最後に、「カガク力が身につく五つのコツ」として5つ書

いているが、なかなかその程度で「カガク力」が身に付きそうもない。しかし、

これから生き抜く人生のコツとして大切なきっかけを与えられた気がする。これ

からの社会を生き抜く若い人に読んでほしい。      2019,7刊 860

 

            「新刊案内2月」