私好みの新刊 2021年02月

『ぼくのマツボックリ図鑑』(ちしきのポケット)盛口 満/絵・文 岩崎書店 
 いろんなものを収集し、イラストも描かれてきた盛口さんのマツボック 
リ図鑑が出た。マツボックリは全体に丸くてデザイン的にも面白い。ここ
では数々のマツボックリが描かれている。マツボックリと言えども、針葉
樹の球果にまで広げているのでバラエティに富む。まずは穂先から見たマ
ツボックリ図鑑。マツにもたくさんの種類がある。メタセコイヤやツガも
入る。みんな鱗片の形が微妙に違うからおもしろい。尖っているのもあり、
丸いのもある。スプーン型やカップ型もある。次は、横からの図、アカマツ、
クロマツ、リュウキュウマツとある。いろんな個性があるのがおもしろい。
次は、ちびぽっくり。ツガが25こほど並ぶがみんな個性がある。続いて、
でかぽっくり。ダイオウショウは公園でもよく見かける。鱗片(種鱗)の穂
先は動物の顔面のよう。ころころボックリ、ストロープマツ、ヒマラヤゴ
ヨウの細長い球果が出る。親せきぽっくりとして、ヒノキやメタセコイヤ
などの球果も出る。
 さて、一つのマツボッリにいくの鱗片(種鱗)がついているだろうか。デ
ータマツのマツボックリで約170個ぐらい、ずらりと並んでいる。各種の
鱗片(種鱗)も描かれている。中に小さな実をつける。種の形もさまざま、
羽根の大きさは大小さまざまである。この羽根で種ははるか遠くまで飛ん
でいく。 次にマツボックリの付き方の図、雌花は先の方、よく使うマツボ
ックリは昨年の球果で茶色に広がっている。実は動物の食糧にもなる。
よく見るのは、リスの食痕(エビフライ)だ。ムササビ、野ネズミも食痕を
作る。種が動物に食べられたくない形に進化した球果、逆に動物に食べら
れようにように進化した球果もある。球果もいろいろ。
球果の絵がまだまだ続く。 2020年7月 1,500円

『 わかめ 』
 青木優和/文 畑中富美子/絵 田中次郎/監 仮説社
 朝のおつゆによく入れるおなじみの「わかめ」、海底でどんな生活をし
ているのだろうか。今まであまり考えないで食べてきたが「ヘー、こん
な生き方をしていたのか」とまずは驚かされる。
 女の子の朝ご飯での疑問「わかめって なんだろう」から話は始まる。
次にぱっと見開きの海の底が出る。いろんな海藻がある。「わかめ」っ
てどれだか自信がない。一枚の大きな切れ込みの多い葉っぱがあるのが
「わかめ」だ。根元に変なかたまりがある。その変な塊にこそ、わかめ
の命を生み出す元が入っている。「めかぶ」という。「めかぶ」をクロ
ーズアップすると、小さな粒が一杯見える。「わかめの もと」だ。細胞
の一種か、小さい粒々が見える。「ゆうそうし」と言う。「ゆうそうし」
を拡大した絵を見ると、へんな二本のひげのような毛がある。まるで動物
だ。このひげをうまく操って「ゆうそうし」は海中を泳ぐという。「えっ!
植物が泳いでいるの」と思わず声を出したくなる。二本の毛をうまくつか
って「泳ぐ」らしい。でも大方は海の流れに沿って広がっていく。日本近
海がもとだったわかめの「ゆうそうし」は今や世界中の海にいるとのこと、
すごい繁殖力だ。さて、岩礁についたわかめの「ゆうそうし」はそこでど
んどん大きくなる。「ゆうそうし」には、オスの「はいぐうたい」とメス
の「はいぐうたい」がありうまく受精するとわかめの誕生となる。以後、
どんどん「わかめ」は成長していく。夏が苦手らしい。
 今は「わかめ」の養殖場がある。海から「わかめ」を切り取る漁師さん
の姿も描かれている。これも大変な作業だ。船の上で、あの「めかぶ」部
分から「わかめ」を切り取っている。これでやっと、おみそ汁の「わかめ」
にたどりついた。簡単にスルスルっと食べているが「わかめ」がより親し
くなる。「わかめ」のなかまや養殖方法など、くわしい解説は巻末や裏表
紙に書かれている。もちろん「わかめ」料理のいろいろも。
子どもから大人まで、しっかりと楽しめる本である。
               2020年12 月刊 1,800円
 
               2021,2月へ