私好みの新刊 20216

『このかみなあに?』 谷内つねお/さく  福音館書店 

 『このかみなあに?』の紙はトイレットペーパーである。ちょっと変

わった横長の本で、トイレットペーパーをイメージされたか。毎日欠か

せずお世話になっているトイレットペーパーだが、紙についてまでじっ

くり考えたこともなかった。長く巻かれていて水に溶けやすい紙材を使

っているぐらいは見当がつく。それ以外はあまり考えたこともない。

この本は低学年の子ども向けであるが、トイレットペーパーの紙質や規

格について書かれている。

 まず、あのロール紙は紙筒にぐるぐる巻かれているが何mぐらいだろ

うか。最初に「どんどんのびる」のページがあり、はたと考えてしまう。

一個のロール紙はいったい何mぐらいだろうか。5m?10m?20m?

予想を立ててみる。半分も使ってないのに学校の廊下の端から端まで伸

びている。ロール紙半分でも運動場に出て子ども10人が大きく間をとっ

て持つ長さは30mぐらいか。紙によって異なっているだろうがJIS規格

では全長27.5mから250mまでとか。普通に使っているロール紙は100m

ぐらいか。次に紙質を調べている。紙質が柔らかいのは当然としても、

定規やコインなどで抑えるとくっきりと型がつく。さすが、柔らかい。

折って重ねると弾力性もあるが、あまり薄いので影もくっきりと映るほ

ど光も通しやすい。ところが、端からよじっていくと・・。強いロープ

に早変わり、石ころもらくらく持ち上がる。ところがところが・・その

よじったロープに水をかけるとプチン。やはり、水には極端に弱い。水

に溶けやすい材質であることがよくわかる。一つのロール紙に色水をか

けてみるとどんどん吸い込んでいく。ロール紙全体もあっという間に着

色されてしまう。トイレットペーパーは吸水力も非常に強い。

 最後に、簡単な解説がある。トイレットペーパーの紙はどんなことに

工夫して作られているのか、サイズはどのように決められているのか、

外国ではどうかなど、ちょっとした情報が書かれていて興味深い。

                   202011月 1,500

 

『クジラが歩いていたころ』 ドゥーガル・ディクソン/作 化学同人  

動物の進化を扱った本といえばダーウィンの『種の起源』がある。神の

創造論が渦巻いていた当時としては画期的だった。ダーウィンの『種の起

源』は1859年に出版されている。ダーウィンのすばらしかったのは、地質

や化石の研究を背景にもち、動物の進化をたくさんの事例で実証したこと

にある。ダーウィンは人為選択の多様性や、環境によるたくさんの動物変

(自然選択)の事例をとりあげた。

 さて、時は流れて20世紀になると化石の発見もどんどん増えた。さらに、

分子生物学的の研究も進み遺伝子解析まで可能になった。遺伝子のDNA

析を通して、どの動物がどの動物に近いかもわかるようになった。この本

は、それらたくさんの化石をもとに動物がどのように進化してきたか、く

わしく書かれている。いわば、ダーウィン進化論の科学的実証版でもある。

 最初に「進化について」や「変化と適応」「突然変異」等の説明があり、

「変化する地球の話」があった後、「生命の樹」「分岐図」などの基本的

な話がある。そこから、さまざまな動物の化石とその進化がわかる書き込

みがある。大胆な挿絵が色どりを増す。表題の「クジラが陸を歩いていた

ころ」の項を見ると、今のクジラからはまったく想像もつかないが、まずは

陸上の四つ足動物がその発祥らしい。約4800万年前の化石がクジラの始ま

りだという。その動物がだんだんと水中生活をし出し、足が退化し、尾びれ

がだんだんと変化してきたよう。今のシロナガスクジラの姿になったのは200

万年前ぐらいとか。その間、10個もの化石が紹介されている。ワニやサイ、

ゾウなども多様に変化してきた様子も描かれている。わたしたち人間はどう

か、900万年前の類人猿の出現からとのことである。だんだん気候も寒くな

った240万年前、「ホモ・ハビリス」がアフリカで生まれた。「ホモ・サピ

エンス」の誕生は30万年前とのことである。

 少々文字は細かい所があるが、現代まででわかっている進化についてくわ

しく見ることができる。            

                     202010月 2,100円 

              新刊案内6