私好みの新刊 20225

『日本列島の「でこぼこ」風景を読む』 鈴木毅彦/著  ベレ出版 

 先月の『ニュースなカラス』に続いて一般普及書だが中身は平易である。
中学生ぐらいから読める。この本は、日本列島を作っている地形的要因につ
いてやさしく説いている。海外をめぐると飛行機でも延々と同じ地形がどこ
までも続くことが多い。それが、日本列島では山あり、谷あり、平野あり、
川ありと目まぐるしく変化に富む。それらの変化はどうして起きているのか、
地質的な側面から解説がある。
「高い空から眺める日本列島のかたち」「日本の風
景はどのようにしてできたのか」に始まり「山々の風景を眺める」「火山がつ
くる日本のでこぼと風景」・・と続く。日本列島が弧状列島であることは地図
でおなじみだが、高い位置から俯瞰するとなおいっそうよく理解できる。どう
して弧状列島になったのか・・。高所からアジア大陸と一体の姿を見ると人為
的に弧状列島を作ったのではないことがすぐわかる。少し目を広げると、イン
ドネシアやニュージーランドも共通している。それらの理由がやさしく説かれ
ている。

日本の風景に目をやると、日本はどこにいても山が見える。高い山や低い山、
平野はどうしてできたのかも書かれている。これらの下はどうなっているのか、
地質的に見た解釈も書かれている。その原因として「プレート」「付加体」とい
う言葉が重みを増す。日本列島の特徴は何と言っても火山地形にある。その火山
についても簡単な解説がある。今は活火山、死火山とかの表現でなく、第四紀火
(260万年前から)という言葉が用いられている。火山ではいろいろ災害をともな
うが、火口噴火のほか、割れ目噴火、水蒸気爆発、山体崩壊などの様子も書かれ
ている。さらに平野について、日本各地の平野には凸凹があることが記される。
平野の成り立ちについて知っていることが水害を防ぐ要にもなり生活に必要な知
識だ。この本で得た知識は日本の地形について知ると同時に災害から身を守る一
助にもなる。                 
20216 1,700

 

『ハクセキレイの よる』(ちいさなかがくのとも2) 
                 とうごう なりさ/さく  福音館書店  

  付属の解説によると、ハクセキレイは東北地方とか北海道で繁殖していたそうだが
今は本州各地でもよく見かける鳥である。スズメより少し大きくて都会でも路上など
でよく見かける。長い尾を上下にふりちょこちょこと歩く姿の鳥はたいていハクセキ
レイだ。顔は白く眼の前後に一筋の黒い線が見られるのが特徴だ。この鳥はたいてい
昼は単独で飛び跳ねているが、夜になると集団で大きな木の中に潜りこんで〈ねぐら〉
をつくるという。そのハクセキレイの昼から夜にかけての行動がこの本では描かれてい
る。絵にも特徴があり、著者によると、リノリュウム版画を彫って仕上げたという。
白黒の鳥の姿を浮き立たせる工夫が凝らされている。

 本では、まず都会のコンクリートビルの屋上場面から始まる。単独で飛び回っていた
一匹がまず屋上の端に止まる。すると、やがて2羽、3羽・・とどこからともなく集ま
ってくる。しばらくすると10羽、20羽・・絵本では50羽ぐらい描かれている。ビル近
くの木に直接入らないで、いったんビルの屋上に集合するところが面白い。ビル近くの
ように人通りも多い所の木が寝るのに安心なのか。あたりが暗くなる頃にはみんなビル
から近くの木に移り終わる。ふだん何げなく見ているだけでは、ハクセキレイにこんな
習性があることには気づきにくい。スズメが木に集まっているのはよく見かけるがハク
セキレイは見たことはない。いや、気づいていないだけなのか。夜になるとお互いまん
丸くくるまって眠りにつく絵が描かれている。まだ、横をバスが通っている通りなのに
かえって安心なのか。夜、北風が吹いてきてもしっかりと枝にしがみついている。朝が
来ると、1羽、2羽・・とまたどこかへ飛んでいく。白、黒、強調された絵がとっても効
果的だ。今後、注意して街散歩を楽しみたい。          20222 月 400