私好みの新刊 2022年6月
『よみがえれ、マンモス!』  令丈ヒロ子/文  講談社 
 マンモスと言えばシベリアの厳冬の中で生きていたゾウのなかまです。
絶滅して約1万年は経ちます。そのマンモスが温暖化の影響でしょうか、凍土
が少し解けた場所から見つかる例が多くなってきました。もし、そのマンモスか
ら生の細胞が見つかれば、マンモスの復活も夢でないと考えた人がいます。
そんなことできるのでしょうか。
 1996年、近畿大学でマンモスの復活を夢見た研究者が「マンモス復活プロジ
ェクト」を立ち上げました。凍土に埋もれていたマンモスの遺骸には、筋肉や皮
膚が保存されている可能性が高いのです。もし、細胞が取り出せたら、細胞核
を取り出しDNAを取り出しゾウのお腹を借りてマンモスの赤ちゃんを産ませるこ
とができるというのです。今はF1野菜(遺伝子組み換え野菜)など、遺伝子組み
換え技術は格段に進歩してきています。絶滅した動物も復活できるのでしょうか。
 比較的、組織の質がよさそうなマンモスが出たという知らせを受けたプロゼク
トチームはさっそくサハ共和国へ行き、マンモスから質の良い筋肉組織を取り出
す。それが国の許可をえて近畿大学に届いたのは2013年7月。大学ではいよい
よ組織から細胞を取り出す作業が始まった。他大学に依頼してゲノム解析も進む。
アフリカゾウから進化したマンモス細胞に間違いない。細胞からタンパク質を取り
出す。ついに細胞核も見つかった。その細胞核をいかにして取り出すかチームの
奮闘は続く。マウスの卵子にマンモスの細胞核を移植する。体細胞が分裂しかか
っている。分裂するか・・、分裂するところまでいかなかった。
 この研究は次世代に受け継がれていく。うまくいくと、医学的研究にもつながり、
絶滅した生き物をよみがえらせることができるが、倫理問題も含めて難しい研究
領域であることは間違いない。生命科学の一面を見ることができる。  
                                2021年 12月 1,400円

『ヒルは木から落ちてこない。』
              樋口大良+子どもヤマビル研究会/著  山と渓谷社
この本の著者は代表として樋口氏がなっているが活動主体は小中学生のグル
ープだ。三重県四日市市少年自然の家で12名の小中学生が「ヤマビル研究会」
をたちあげた。その活動ぶりが主に紹介されている。
 ある日、少年自然の家で学校が主催する自然体験学習が始まった。ここはヒル
が多いと言われているので、子どもたちはヒルに警戒する。そこで、「ヒルを見つ
けたらフィルムケースに入れるよう」に話す。ヒルはつぎつぎと見つかった。身近
な生き物として 子どもたちも興味を持ってきた。著者は「ヒルは下から上がって
くるだけかと思いきや、実は首筋や背中をやられる人もいます。・・・ 昔から、ヒル
は木の上から落ちてくるといわれています。ヒルを捕りに行く時は気をつけましょう。」
と話をした。その後も子どもたちはヒルを集めて鉛筆でたたいたり、さわったりして
いろいろとヒルを観察している。ヒル研の活動は広がっていく。ある時、「ヒルは本当
に木から落ちてくるのか」が話題になる。もしそうなら、「一度落ちたヒルは、その後ど
うなるの」「木の上に戻っていくか?」「ヒルが木登りしている所を見たことある?」などと
議論。けっきょく子どもたちで実証実験をすることに。ビニールシート上に子どもが座
ってヒルを足元に放す。ヒルは徐々に人の体を登っていく。地獄のような体験実証実
験だ。ヒルは木の上から落ちてこないこと、木登りしないことも確かめた。結論は「ヒル
は木の上から落ちてくることはない。足元から人の体をよじ登っていく」である。
その他、チームの子どもたちはヒルの解剖もする。ヒルはどこでどうやって広がるのか、
研究の巾は広がるばかり。
 子どもたちが中心になってヒルの生態、形態など調べ行くところが会話調で書かれて
いるので小中学生も読みやすい。              2021年 9 月 1,430 円