私好みの新刊 2023年01月
『 うに 』(海のナンジャコリャーズ) 吾妻行雄・青木優和/著 仮説社
 海のナンジャコリャーズシリーズとして『うに』が出た。このシリーズは、
絵本としてはあまり見ない海のシリーズで『われから』『わかめ』に続いて
3作目である。海の下の生き物の生態はふだん見えにくいこともあって興味
深く読める。
 まず、見返しにはウニについての説明がくわしく書かれている。ウニは自
由に動く棘が周りにありなかなか捕食動物も近付けない。また消化器官は長く
体内の下から上に向かってくねくねと曲がってうまっている。上にある多孔板
という特別な器官から海水を採れ入れて〈管足〉を動かしているという。
排泄口は上にあり、その肛門の周りには〈生殖板〉とか〈管足〉という変わ
った器官も並ぶ。ウニは大きなとげだけが目につくだけだったがいろんな器
官が備わっている生き物であることがよくわかる。たくさんの巧妙な仕組み
が機能している。
 さて、絵本は〈ぼくがおじいちゃんの家に遊びに行った〉ストーリーで展
開されている。後でわかってくるがおじいちゃんの家は東北の海辺である。
おいしそうな海産物がたくさん並ぶ。ウニはあらめやこんぶ、わかめの多い
豊かな海底で育つ。ところが2011年の春、突然海底も大騒動に見舞われる。
海藻たちは引きちぎられたり、ウニたちは陸に打ち上げられたりする。あれ
だけたくさんいたウニたちも海底にはいなくなってしまった。しかし海底の
植物たちの回復はすごい。次の年、もう海藻たちは戻ってきた。すウニたち
もどこからともなくもどって来る。ウニの卵や精子が飛び出して受精する。
受精卵から孵った幼生の姿もくわしく描かれている。こうしてウニたちは
また海に戻ってきた。今は「蓄養場」でおいしいウニを育てているという。
ウニは不思議一杯の生き物であることがよくわかる。本文はひらがなで挿
絵も多く低学年児から読める。     2022年10 月 1,800円

『貝のふしぎ発見記 』 武田晋一/写真・文  少年写真新聞社
 この本は「貝のふしぎ・・」という所がいろいろと面白くするポイントに
なっている。貝は一般的に常用されている言葉で学術用語でもなく分類上の
言葉でもない。そこのずれがいろいろおもしろい。それにしてもよくもまあ
これだけ集めたことだと感心する。
 見開きに貝は「軟体動物です」と断りがある。従ってこれからは軟体動物
として貝を見ていくことになる。著者はきれいな砂浜で見たアイオイガイが
元で貝に興味をいだいて行く。アイオイガイはタコのようで貝がらがついて
いる面白い軟体動物だ。続いて普通のアサリが出てくる。模様はいろいろ。
「アサリのおそうじ実験」というコラムが面白い。続いてマテガイ出る。
岩場に穴をあけて住んでいるイシマテ、穿孔貝のいくつかも紹介される。
次は真珠貝、これは実際にアコヤガイを養殖している現場を紹介している。
たくさんの真珠貝が生産される。ぼちぼちへんてこな貝が出てくる。まずは
石の中にくっついて離れない貝、岩にへばりつく貝、〈外とう〉をまとった貝、
海辺でも陸に棲む貝などなど。次は海の貝につづいて陸の貝が出る。おなじみ
カタツムリ、ここにあるコラムでは「カタツムリの渦は大きくなるにしたがっ
て増えていく」とのこと。淡水の大型貝はなんといってもイシガイ、カラスガ
イ、これらはタナゴの産卵場所ともなっているが年々少なくなっている。ヒッ
チハイクさながらの貝もいるとか。ここでナメクジ登場。コラムを見るとナメ
クジもいくつかの種類がある。海に棲むナメクジもたくさんいる。ナメクジにも
生まれた時は貝殻がある。飼育して観察していくとアメフラシは体内に貝がらを
持っている。「ヒザラガイは貝なのか」も面白い。続いてクリオネが出てくる。
「えっ、クリオネも軟体動物か」と認識を新たにさせられる。「イカだって貝、
タコだって貝」なるほど。最後は、奇妙な姿のアオイガイの紹介で終わっている。
貝もさまざま。小学校低学年から読める。    2022年6月 1,800円
            
             新刊紹介1月