私好みの新刊 20236

『鳥は恐竜になった』 鈴木まもる/作・絵   アリス館

  「鳥は恐竜から進化した」と言われ出してからもうずいぶん久しい。小型肉食恐竜

や始祖鳥などの研究から現在の恐竜と鳥類とは似ていることが次第に明らかになって

きた。足が胴体からまっすぐ下に伸びていることや恐竜に羽毛の痕が見つかったこと

などから獣脚類恐竜から鳥類が進化していったことが分かってきた。いっぽう著者の

鈴木まもる氏は以前から世界各地の鳥の巣を研究しておられた。以前にも『鳥の巣の本』

とか『ぼくの鳥の巣絵日記』などの著書がある。鈴木氏は、今までの経験をもとに恐竜

も鳥も巣の形や子育てなど似ているのではないかと考えられ、〈鳥の巣からみた進化の

物語〉として今回絵本に編集された。

 「はじまり」でいろんな鳥の巣の絵が出てくる。そのなかで著者は枝につり下がった

キムネコウヨウジャクという鳥の巣に注目した。次ページに大きく描かれているが、

人間の妊婦のお母さんの体形にそっくり。これを連想して「恐竜から鳥への進化を考え

させるきっかけになりました。」とある。どんなところからそう考えられたのだろうか。

 次からは想像した恐竜の巣の絵がつぎつぎと出てくる。水辺の巣もある。木の上の巣

もある。始祖鳥など木の上から飛び立った絵もある。ここで「鳥は、どうやって空を飛

べるようになったのか」の解説がある。いろんな方法で勢いをつけてやがて木の枝など

から飛び立った恐竜の絵がある。恐竜と鳥の簡単な骨の構造も記されている。次に巨大

隕石衝突の画面が出る。地球は一面火の海になった。恐竜はすべて絶滅した・・と思わ

れたが小さい恐竜は生き残った。いろんな鳥の巣を紹介していく。最後に「なぜ、恐竜

は絶滅し鳥たちが生き残ったのか、どうして恐竜から鳥へと進化したのか、今ある鳥の

巣が教えてくれていると思えるのです。」と結んでいる。 

    2022  7  1800

 

『人類の物語』 ヴァル・ノア・ハラリ/著 リカル・ザプラナ・ルイス/絵 西田美緒子/訳 

                               河出書房新社

 人類史と考古学を合体したような変わった物語本ある。史実にもとづいているがいくら

かフィクションを交えた読みやすい本になっている。子どもに語りかける口調で書かれ

ているので、小学校高学年児から読める。

 物語は「私たちはその昔、野生動物だった」から始まる。ほかの動物と比べるとずいぶ

んと弱々しかった。しかし、やがてわたしたちの祖先は棒や石を使い道具を手に入れ、火

の使い方を知って調理をするようになって脳の発達を大きくしたという。はじめ小型の人

類がフローレス島(インドネシア)に生まれ、その後ヨーロッパやアジアで別の人類が生ま

れる。そのなかでアフリカで生まれたホモ・サピエンス(サピエンス)が人のルーツとされ

ている。ホモ・サピエンスは多くの人の力を合わせる能力があったから生き延びてきたと

強調する。わたしたちがスポーツを楽しんだり会社を経営できるのもお互いを信じ、力を

合わせていることにあると現代風に解く。サピエンスも狩りと採集時代は随分と心細い生

活をしていたらしい。そのサピエンスが世界に飛躍し出したのは水に浮かぶ舟を考えたこ

とがきっかけだったという。サピエンスはやがてオーストラリアに移り住むようになり

次々と大型の動物が絶滅していったという。サピエンスは体は小さいが集団で狩りをし火

を使って次々と大型動物を追いつめたらしい。サピエンスはやがてシベリアにも進出し陸

続きでアラスカ、アメリカ大陸へと進出した。そこでも大きなゾウやマンモスの狩りをし

絶滅に追いやったという。ここでも変わった理屈が述べられている。サピエンスは狩りを

している時、マンモスが絶滅するなんて気が付いていなかったらしい。しかし、何代にも

わたって少しずつ狩りをしていたのが結果としてを絶滅に追いやったのだという。なるほ

どそうかもしれないと思える。

最後に著者は「私たちは、世界中でいちばん危険な動物になっている」と強調して終わ

っている。                      2022111600

 

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