私好みの新刊 20237

『七つの石の物語』 小手鞠るい/作 サトウユカ/絵  講談社

  たわいない物語の本であるが、たくさんの鉱物が出てくる。しかも、ある

程度は基本的な話にもふれている。一般にはなじみにくい鉱物も、このうな

入門の仕方も入り口としてはあるのではと取り上げてみた。小学校中学年ぐ

らいから読める。おばあさんが書いてくれた石の物語として紹介されていく。
50年前の話で
ある。鉱物の博物館におばあさんがわたし(著者)をつれて行く話。
 博物館には
たくさんの種類の鉱物が並べられている。ここにこんな文がある。
「長い時
間をかけて、ゆっくりゆっくり成長していきながら、鉱物はさまざま
な形に
結晶していくという。」一つの鉱物は急にできるのではなしに、成長して
きくなっていくことはあまり一般には気が付かれていない。私も鉱物の話を

している時に「鉱物は成長するの?」と聞かれたことがしばしばある。「結晶」

についての話も書かれている。ここで、ほたる石、ダイヤモンド、ざくろ石が
出てくる。ここで鉱物とは何かの一通りの説明がある。次に宝石の話。宝石とは

「美と硬度の結晶したもの」とはうまい表現をしている。長石の仲間、緑柱石の
仲間、
水晶の説明もある。一口に水晶と言っても、色形は多様だ。黒水晶、紫水
も出てくる。各色に変化するトルコ石の説明もある。ここで、石博士という

少年とわたしとの交流が始まる。鉱石鉱物のラピスラズリも出てくる。磨くと宝
だが、くだくと顔料にもなる。やがて石博士はアメリカへ帰るが、またわたし

との交流が生まれる。「日本語はまるでほたる石みたい」として、ほたる石の

多様な色の変化を紹介している。ブラックライト(紫外線)を当てるとブルーに

変化することも紹介している。やがて10年後、二人は大学生になっても交流は

続く。孔雀石の話が出る。エジプト時代から顔料などに重宝されていたという。

最後に、誕生石の話、元素の周期表も載せられている。周期表の一応の解説も

ある。                      20232月 1,400

 

『化石のきほん』 泉賢太郎/著 菊谷詩子/絵  誠文堂新光社

 こちらはちょっと高学年向きの本。ちょっと文字が小さいが中学生なら読め

るのではないか。文章表現はやさしい。「化石のきほん」について最近の知見も

含めて語られている。多くのイラストが理解を助けている。最初のChapter1はさ

まざまな化石の紹介文で、一段小さい文字も含まれるので最後に見てもいい。

Chapter2「地層と化石」からはいろいろの話がある。「地層のでき方」では、普

通は地下の圧力が考えられるがそれだけでは地層になりにくい。間隙水中で鉱物

が生まれその鉱物の粒子と粒子ががっちり組むことによって地層は生まれるという。

カンブリア紀は生物が爆発的に増えたことで知られているが、なぜか。カンブリ

ア紀の生物の生成がおもしろい。一つは海底下にもぐる生き物が増え酸素がかく

乱されたからという。もう一つは、眼のある生き物が生まれたからと言う。食う

方も食われる方もし烈な戦いが生まれ種の増加につながったという。いよいよ生

物は陸上に進出する。まずオルドビス期にはコケや地衣類が生まれシルル紀にな

ると大型の植物が増え、茎も出始める。石炭紀には種子植物も出現する。大気中

の酸素濃度も増して、いよいよ植物は繁茂する。しかし、分解する微生物の出現

は遅く、植物遺体はたまる一方、そこで土壌や石炭が生まれてくる。この辺の変

化がわかる化石も見つかっているという。動物の陸上進出もおもしろい。陸上で

生きるすべを獲得しなければいけない。まず陸上に上がってくるのは両生類、丈

夫な四肢を持った背骨動物である。石炭紀には巨大な昆虫類も生まれる。酸素濃

度が35%にもなった。

 中生代になると大恐竜時代を迎える。白亜紀末に天体衝突が原因で恐竜は絶

滅したと言われていたか、今の鳥類も恐竜の一部だという。新生代になり気温も

下がってくると珪藻の多様化がおき、クジラ類の多様化にもつながったという。

第四紀になるといよいよ人類紀。人類の進化も多様だ。興味ある話が続く。 

 20234月 1,800

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