私好みの新刊 202311

『光るきのこ』 宮武健司/著  たくさんのふしぎ6月号   福音館書店

 ツキヨタケなど「光るきのこ」のあることはマニアには知られていて、ハンディ 

図鑑などにも掲載されている。この本のすごいところは著者が各地を訪れて「光る

キノコ」をたくさん紹介してくれていることだ。「光るキノコ」はこんなにも種類

があるのかと驚かされる。

 その前にちょっとキノコについて触れてみる。キノコと普通私たちが見ているの

は子実体といわれている傘の部分、キノコの本体は地下にはりめぐらされている。

そのキノコが森の木々と根で養分をやりとりして共生したり、朽ちた樹や葉を分解

したりしている。このほか生きた木に寄生して生きているキノコもある。

 さて、本文にもどると、まず見開き内ページに著者が撮影した場所の地図が提示

されている。本文最初は蛍の夜景写真が出る。水辺のゲンジボタルや陸生のヒメボ

タルがいる。どちらも明るくまばたく。いよいよキノコ、キノコでまず紹介される

のは八丈島の森に生えているヤコウタケなど。次は高知県の森でシイの倒木にシイ

ノトモシビタケが並ぶ。次は長野県でツキヨタケ。これは各地にあるが宮城県での

写真が出る。これは大型のキノコが夜になると緑色に光る。再び高知県にもどって

シイノトモシビタケが出る。点々と光るのがかわいい。菌糸まで光っているものも

ある。次は宮崎県で見つけたエナシラッシタケ。蓮根型の変わったキノコである。

こんどは石垣島に飛ぶ。ここでは蛍との共演写真がいい。さらに種子島へ。

最後に各地のツキヨタケが各様に写し出されている。大木の周りに見事に生えて

いる光るキノコは圧巻である。「きのこや菌類が生き終えた大木の命をふたたび大

地に返す大きな役割を持っていることを実感しました。」と書いている。    

            20236月 700

 

『カブトムシの謎をとく』 小島渉/著 ちくまプリマー新書  筑摩書房                       

 ちくまプリマー新書であるが文章は平易なので中学生ぐらいから読める。著者の
島さんはかなり以前からカブトムシの研究をしていて、2018年にも『カブトムシ
の音
がきこえる』(たくさんのふしぎ)を出している。カブトムシもよく観察すると
いろい
ろと面白いことがわかってくる。

 まず「なぜ、オスのみ角があるのか」という問いがある。角はカブトムシにとっ
て大
きな武器でもある。「おおきい武器を持てばより多くのメスと交尾できる可能
性がある」
と書かれているがオスにとっては子孫を多く残す手段の一つか。「求愛中
のオスは腹部と
前翅をこすりあわせて独特の歌を奏でます。」ともある。そんな求愛
の音を聞いてみたい。

 カブトムシは意外と都会でも多く見られるという。都市公園などでは間伐材や落ち
葉を
ためている場所もあるが、そのような場所はカブトムシの棲み家となる。幼虫の
くらし
については前回の書物でも紹介されているが、幼虫は二酸化炭素の量を感知し
て微生物
の多い餌を見つけるという。あの固いカブトムシもばらばらにされることが
あるとか。
いったい〈犯人〉はだれか。カラスかタヌキか。そんなことまで著者は自
動撮影のカメラ
を使って調べている。「家のシマトネリコの樹にたくさんのカブトム
シがいる」という子
どもからのメールが届いた。調査の方法まで教えながら論文にま
で仕上げている。最近、
都会のシマトネリコにもカブトムシがよく来るようだ。カブ
トムシとオオスズメバチと
の攻防もおもしろい。どちらも強者だがお互いの格闘ぶり
がくわしく論じられている。

 またカブトムシは島に隔離されていることによって独自の進化をして場合もあると
いう。
沖縄や屋久島など離島のカブトムシ調査も興味深い。日本のカブトムシは〈進
化〉してい
るのか。

最後に、昆虫の防衛についてジャコウアゲハの話も加えられている。

                             2023年 8月 880

               新刊案内11