私好みの新刊 2024年1月
『うちのライオン うちのトラ』 伊澤雅子/ぶん かがくのしも10月号 福音館書店
ライオンもトラも食肉目・ネコ科である。ということは飼い猫と基本的には同じ体型を持ち
同じしぐさをするはずである。そこのところを小さい子どもにもわかるように実にたくみに対
比して挿絵で紹介している。家の飼い猫とライオン、トラなどとはとてもや同じ種類とは思い
にくいが、ひとつひとつのしぐさや行動を見ていくと同じ種類であることが見えてくる。とて
もよくできた絵本である。
カバーをめくるとライオンとトラに混じって小さなネコも描かれている。ここに副題として
「ネコのひみつ」と書かれている。どんなひみつがネコにあるのだろうか。
「ライオン、トラは獰猛だし大きさもぜんぜんネコとは違う」と子どもは思うかな。次をくる
とウやライオン、トラの絵。ここに「ライオンやトラには、ネコとにているところがたくさん
ありますと書かれている。にているかなぁ、と思って次を見るとまん丸い顔が出てくる。
「猫の顔は小いけど、なんとなくライオンやトラと似ているなぁ」と子どもは思うかな。大き
な目やぴんと立った耳、長いひげも似ている。次は牙、これも形は小さいがライオンとネコは
そっくり。次は足。猫はふだん爪はひっこめているが、何かにつかまるとガリガリと掻く。こ
れはトラも同じ。次はトラが足音をたてずに獲物にしのびよる姿勢。これもネコとそっくり。
次は、トラがウサギを追いかけるシーン、ネコがおもちゃに飛びかかる姿と似ている。こんど
はヒョウが木の枝に横たわっている。猫もしばしば本棚など高い所に登って下を見ることが多い。
こんどはトラやライオン、ヒョウなどが寝そべっている絵が出る。ネコのなかまもよく寝ます。
その他まだまだトラやライオンなどとネコとの共通点が描かれている。子どもたちも納得する
に違いない。
このあと子どものじゃれ合う姿や肉球のつめがかくれているようすを描かれている。
2023年10月 400円
『海にしずんだクジラ』メリッサ・スチュワート/文 千葉茂樹/訳 藤原義弘/監修
一つの命がめんめんとつながる命継承物語である。「深海底に突然クジラが沈むと、想像を
こえた大宴会の始まりです。」と監修者の藤丸さんが書いている。深海で一匹のクジラが海底
に沈むと分解されるのにおよそ500種の生き物に命をつないでいるとか。一匹のクジラの死体
がたくさんの海の生き物の命をつないでいくという壮大な物語である。
著者の経験に基づく事例をもとにこの物語は始まっている。まず、一頭のクジラの死体が海
底に沈むところから。次ページ、「70年生きてきたクジラの命は、これでおわり、でも、深海
にくらす生き物にとっては、あたらしいはじまり。」と書く。最初にやってくる魚はなんだろ
う。ヌタウナギと書かれている。サメではなかった。においをかぎつけ集まって来たと書かれ
ている。次は、オンデンザメと書く。クジラの皮と身にかぶりついたそうだ。やがて、いろん
な生き物がやってきた。あまり聞きなれない魚だが、コダラとかゲンゲのなかまと書いている。
それにズワイガニがやってきて「小さな残りものを、ほじくるように食べる。」とある。やっ
とクジラの骨が見えてくる。さらに骨だけの死体が描かれている。ここには小さなヨコエビが
やってくる。そのヨコエビをねらって小さなタコたちが集まってくる絵がある。タコもたくさ
ん集まってきている。もうこれでお終いかと思いきや・・まだまだ集まってくる。カニのなか
まや他の甲殻類、ナマコなど小さな生き物たち。これらの生き物にとっは、肉のおこぼれもた
まらないごちそうのようだ。ゾンビワームと言う生き物(海藻?)がびっしりクジラの骨をおお
うとか。なんと「根から酸をだして、骨にあなをあけていく。」とか。こんどは小さなバクテ
リアが命をつなぐ。海底をはいまわる小動物も来る。それを目当ての生き物も集まる。まるで
大レストランに早変わりだ。やがてバクテリアはクジラの骨を穴を開けトンネルをつくってい
く。そのとき出るガスで微生物が育っていくとか。
「50年にもわたって、何百種類もの生きものの、何百万もの命をささえつづけたのだ。」と結
ぶ。 BL出版 2023,8,1 1,800円
読物案内