私好みの新刊 20243

『動物たちもオナラする?

 ニック・カルーソ&ダニー・ラバイオッティ/

         アレックス・G・グリフィス/絵 くまがいじゅんこ/訳 化学同人

 子どもたちの喜びそうな題名でオナラの正体を書いた科学絵本。絵本なので絵だけ見て

いれば幼児も楽しめる。本文を読もうとすると小学校中学年ぐらいから読んで楽しめる。

 最初の2ページに「これはオナラについての本」と書かれてオナラの正体が書かれてい

る。文字は大きいが漢字交じりの文で内容もちょっと高度、読みにくければ飛ばして次へ

進んでもいい。ここではオナラの正体について、体内に入った空気もガスであること、食

物を分解しているとガスが出ていること、腸内にいる細菌そのものが出しているガスがあ

ることなど書かれている。食べ物によってオナラの種類が変わってくることも書かれている。

くさいオナラは肉質の食べ物から出ていて硫黄が含まれているとのこと。

 ひととおりオナラの正体が飲み込めたところで各動物への質問が続く。初めは「ウマは

オナラする?」。ページをくると「する!」と文字が出る。馬は多くの草を食べるが草は消化

するのに時間がかかるため細菌が多くしょっちゅうオナラをするらしい。次は鳥のオウム。

「オウムはオナラをする?」で次ページをくると「しない!」とのこと。鳥はオナラをしな

いそうだ。次はチーター。「チーターはオナラする?」でページを繰ると「する!」とある。

肉食なのでくさいオナラだそうだ。次はクモ。次ページをくると「わかっていない。」とあ

る。クモは獲物をとかしてどろどろの汁をすうそうで体内に細菌もいるので「オナラをす

るかもしれない」と書かれている。続いて、クジラ、フェレット(イタチ科)、カゲロウ、

サラマンダー(両生類)、アシカ、チンパンジー、ユニコーン(馬に近い架空動物),ヘビ、

タコ、キツネザル、イヌと続いて恐竜もある。最後にニシンが出ておしまい。みなさんの

予想はどうでしょうか。○○はオナラをする? 

各問いの答えに解説が書かれているので一応は納得できる。 

 20239月 2,000

 

『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら』小池伸介/著 辰巳出版

 近年クマが市街地に出てくるとで話題になっている。場合によってはしかたなく
射殺さ
れる場合もある。クマはただエサを求めて人里に現れてくるだけなのにな
んとか命を救う手立てはないのだろうか。それらの基礎研究にこの研究は役だつ
のではないか。

この本は児童書ではないが文章は読みやすく中学生くらいなら読める。クマ研究
の珍し
い本である。著者は昆虫などに興味はあったが大学での研究室のきっかけ
で〈クマのウンコ〉を研究することになった。深い森に入り込んでクマのウンコ
を拾い集める。時にはドラム缶の罠でクマをとらえ、吹き矢麻酔で眠らせている
間に電波発信機のついた首輪をつけるという作業もしている(今はGPS発信機)
時には採血もする。クマの食べ物がわかる。それらのようすがたんたんと書かれ
ている。時には何台もの監視カメラを取り付けるそうだ。

これでクマの行動をつきとめる。いちおうスプレー缶を持っているもののとても危
険がともなうことは想像にかたくない。そのた著者のクマのウンコ研究の実際が細
かく書かれていて興味深い。後半には現在のクマ研究の最前線が書かれている。首
輪にGPS付きのカメラをとりつけ、クマの行動スピードやいる場所の深さや高さま
でわかるという。クマの毛をしらべれば、食生活がまるわかりという。体毛はどん
どん成長するので場所によって成分は違っている。体毛の中の窒素や炭素の原子の
量を分析することによって何を食べていたのかが分かるらしい。クマは一年のうち
秋の3ケ月間にたくさん食べ、一年の80%のカめめめめロリーを採るという。かなり
の食事をまとめ食いするそうだ。

 将来、野生動物調査に興味を持った後輩に向けてのフィールドワークアドバイス
も書かれている。こういう基礎研究がクマの保護に役立つといい。  

   2023 7  1,500 

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