私好みの新刊 20244

『パンダはどうしてパンダになったのか? 方盛匡著 

わんうぇい絵 技術評論社

    800万年生きた進化の歴史

 みなさんに親しまれているパンダ。パンダって何科に入る動物と思われますか。表紙に

800万年生きた進化の歴史」とも書かれている不可解な動物でもある。古い動物図鑑に

はパンダは出て来ない。昭和58年の広辞苑では「形態はクマに類似し中国四川省り高山

地帯の原始林に生息し・・」と書かれている。昭和64年の日本語大辞典では「アライグ

マ科とクマ科の特徴を備えた原始的なほ乳類・・」と書かれている。2017年発行の『教科

で学ぶパンダ学』(今人舎)では「生きている化石」とも書かれている。どうも現生の哺乳

類のなかでも系統が特異な動物のようだ。だからか、動物園のパンダの誕生には異様な人

気を博している。

 この本のカバーには「パンダはどうして熊なのに笹や竹を主に食べるようになったの?

と問いかけている。「パンダはもともと肉食動物だったのです。」とも書かれている。

どうしてなのか。内ページのパンダの歴史に描かれているのは、なんと7-800万前にパン

ダの祖先が生きていたという。7-800万年前というと第三紀の終わりごろ比較的暖かくな

ったころだ。ページをくるごとにパンダの歴史が描かれている。パンダは中国でも四川省

近く〈泰嶺山系〉で生れたという中国固有種だ。「始パンダ」と言いい全体に薄黒く今の

熊に似ている。約300万年前に寒波が訪れて獲物の動物が激減、食べ物に困った始パンダ

はササやタケノコに食を変えたという。何世代か引き継いで「竹」という食物に適応でき

るようになったという。今のパンダが竹を食べるにはそんな歴史がかくされていたのか。

その後何度もの寒波を乗り越えて今のジャイアントパンダになったという。今のパンダは

「動物界の生きた化石」であり「過酷な自然界のルールに適応してきた探検家なのです。」

と結んでいる。イラストも中国の人の絵、見やすくて読みやすい。 

202361,400

 

『奇妙で不思議な菌類の世界』  リン・ボディ/文 創元社

ウェンジア・タン/絵 白水貴/監訳 斉藤隆央/訳者

菌類の総合的な絵本である。ページをくると菌類の世界が簡単に紹介されている。キノコ

、酵母、カビはよく知られているが水生菌、子嚢菌も入っている。以下、それぞれの種ご

とでなく生活の場として紹介されていく。大胆な絵が彩りを添えている。

 まず「地球を緑で満たす」とある。地球上の緑の世界は菌類があってのこと。水中だけ

だった植物が地上で菌類と結びついたからこそ陸上での生活が可能になった。植物は根で

菌類と結びついているからこそ養分や水のやり取りができるようになった。つぎは「自然

界のお助け役」。菌類は植物だけでなく動物にもいろいろ〈お助け役〉をやっている様子

が描かれている。次は「胞子の旅」。これはよく知られたキノコゃカビの胞子の話。次の

「きのこの成長」も大きな絵で描かれている。光るキノコの話もある。今度はうどんこ病

やいもち病など迷惑なキノコの話や植物に害を与える菌類の話もある。逆に「環境にやさ

しい菌類」もある。また、動物にとりつく菌類もある。私たちの体の中も菌類づくめ。工

業的に利用されている菌類もある。家庭内の菌類、水中の菌類もある。著者は「菌類がい

なければわたしたちのすむ星の生態系がおかしくなってしまいます。」と説く。菌類はわ

たしたちにとって切り離すことができない生き物であることがよくわかる。最後にくわし

い「訳者あとがき」と「監訳者解説」(菌類研究者)がある。監訳者は菌類の生態系におけ

る役割を説いた上に「菌類は食品や医薬品の原料となって、その存在価値を遺憾なく発揮

しています。」と説いている。菌類はわたしたち人類にとって切っても切れない関係にあ

ることがよくわかる。絵本なので小学生低学年にもわかる構成だが、小さな解説文まで理

解しようとすると高学年生以上か。            2023 5月 2,200
                   
                 
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