私好みの新刊 2024年10月
『くさぶえあそび』 かがくのとも4月 福音館書店 440円
くさぶえあそびについて描かれた科学絵本。まず、どこからか聞こえるく
さぶえの音、お母さんが吹いていたくさぶえだった。ページをくるとお母さん
がぼくにくざぶえの鳴らし方を教えてくれた。固そうなアオキの葉っぱ。葉の
折り方、鳴らし方の図もある。続いて僕もやってみるが、なかなか音が出ない。
少し慣れがいるようだ。ついに「やったー」とぼくも成功。少し鳴らし方につい
て補っている。次は、アオキより少し柔かいヒサカキとネズミモチの葉っぱ。
これは、葉を丸めて吹き口を少しはさむと音が出る。わりと簡単そう。ぼくも
すぐに出来た。明るい広場にやって来る。春、ここにあるのはスズメノテッポウ。
これはピーピー草と呼ばれるようによく知られた音の出る草。葉っぱの折り方
も書かれている。口の中の空気を少し吹き込むと「ピー」と高い音。お母さん
と野原で草笛遊びが楽しそうな絵が続く。今度は水辺にやって来た。スズメノ
テッポウより少し太いヨシ原だ。ヨシも笛になる。さっそく一本を取る。葉っ
ぱの中にある新芽を取り出して空洞を作って片方を吹くと・・「ブー」と低い音。
これもたやすく吹ける。次は再び野原へ。タンポポがたくさん生えている。タ
ンポポの茎に挑戦。花の付いた軸を引き抜いて短く切り、途中で折ってできあ
がり。吹き口をちょっとつぶして吹くと「ビー ブー」と心地よく鳴る。こん
どは、お宮にやってきた。ツバキがたくさん咲いている。近くに行くと穴が開い
た実がいっぱい。ツバキの実とイスノキの虫こぶが転がっていた。おかあさんは
これもならないか試みる。ツバキの実からは「ビィーッ」、イスノキの虫こぶか
らは「ホーッ」。成功した。最近イスノキはあまり見られなくなったが、いく
種類ものアブラムシがイスノキに虫こぶを作る。音階もいろいろ出るらしい。
楽しい絵本である 。2024年 4月1 日 460円
『捨てられる魚たち』 梛木春幸/著 講談社
この本の筋としては著者梛木さんの一生が語られているが、あまり知られて
いない漁師さんの世界が知れるので取り上げた。私たちはふだんスーパーなどで
棚にのせられた魚を買うのが日常になっている。スーパーで見る限り漁師さんの
捕った魚のほとんどが店に並んでいると錯覚する。ところがそうでないらしい。
「漁師さんたちのとっている魚の3割ほどが、そのまま捨てられてしまっています。」
とある。びっくり! 漁師さんが捕った魚も小さい魚とか不用の魚は海にもどすこ
とはよくある光景だが、捕った魚の3割も捨てられているとはなんともったいない
話である。こういう魚を「未利用魚」と言うらしい。「釣れた魚の半分を捨てている。
息子にはとてもあとを継がせられない。」ある漁師さんの言葉が紹介されている。
魚業界はそんな現状なのかとまずは驚かされる。捨てられる理由は、まず「規格外
だから」がある。箱詰めするのに規格があるらしい。大きすぎても、小さすぎても
取り扱いがめんどうになるので規格外は捨てるという。捨てられる2番目の理由は
「見た目が悪いから」という。これなど少しでも安い値段で売れないかと思うが、
価格が安いと箱代とか氷代も出ないので赤字になり「捨てる」しかないという。今、
なんとかこの問題を解決すべく水産庁も動いているとか。ある意味「自然の生態系」
維持にもつながる。海の生態系の変化は今もう始まっているという。海水温の変化
もあるが、今まで捕れていた魚はだんだん捕れにくくなっている現状はもう始まっ
ているという。解決策としては「未利用魚」の料理の仕方を広める事や料理の工夫
などがあるそうだ。著者はたまたま地元に帰り料理教室を始める。和歌山県で伝わ
っていた「灰干し料理」を学び未利用魚を使う事を試みた。ちょうど鹿児島県の桜
島火山灰が役に立った。道の駅で「灰干し弁」を売るなど次々と「未利用魚」の利
用法を考えていく。和食文化を育てたいと著者は言う。
2024年1月23日 1,300円
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