私好みの新刊 2025年4月
『 へび 』かがくのとも 10月号 梅村有美/さく 福音館書店
へびはふつう人には嫌がられる生き物だ。そのへびに小さな子ども
にも親しんでもらえる本が出た。もちろん、毒を持たないアオダイショ
ウにしぼった描写である。
ページの初めと次ページは淡い緑の画面がでる。夏の里山である。
そこへやってきたわたしの見た光景は・・。なにやら人影が、じつはへび
を研究しているという女性の研究者の姿である。ヘビの話なのになんとな
くソフトな感じがいい。女性研究者の口からヘビの習性について次々と話
される。「あぜみちの わき、いしがきのうえなどで ひなたぼっこをし
ていたり・・」「きのうえや たんぼ、ためいけの ちかくでえものをが
したり・・」とやさしく語りかけられる。へびをさがしに「いっしょに
いってみますか?」とその女性。「ちょっと こわかったけど」と、女の
子はついて行くことにした。やがて、見えてきた姿はどくろを巻いた灰
色っぽいへびの姿。「ああやって からだを あたためるんですよ。」
と女性が語りかける。そういったあと女性はそのへびをつかまえた。
なれた手つきでつかまえそのへびをわたしの前に。そして、このへびに
は「どくは ないんですよ」と語りかける。女性はへびが落ち着いてい
られるようにうまく手でつかんでいる。そして、ウロコの話などいろい
ろと女の子に語りかけてくる。なるほど、近くで見るとウロコも美しい。
だんだんへびにも慣れてきて、女の子もへびのからだを「そっと なで
て」みる。「すべすべしていて びっくりしました。」やがてその女性
は女の子に「しっぽは どこだか わかりますか?」と問いかける。こん
な調子でへびの話はまだまだ続く。最後に「だっぴがらを わたしに
くれました。」で結んでいる。読み終わるころにはへび、とくにアオダ
イショウには十分に親しめるようになった。やさしくへびにつきあえる
本である。
最後にへびをつかまえる時の注意点が書かれている。もちろん毒蛇も
いることは記されている。 2024年10月 460円
『古生物がもっと知りたくなる化石の話』
木村由莉/著 岩波ジュニスタ 岩波書店
著者の木村百莉さんは、国立科学博物館で哺乳類の化石研究に携わって
いる研究者、それだけに化石発掘・研究のようすがリアルに書かれている。
子どもたちにも親しみ深く読めるのでは。
まず1「化石を研究する」の項から始まる。博物館内の仕事の様子の紹
介の後、「化石になる条件は?」の話がある。もちろんどの動物も死んで土
に埋もれたら化石になるわけではない。ある条件を満たした死骸しか化石
として残らない。「化石の色はどう決まる?
」「目当ての化石はどの地層に?」などもある。研究の世界では「発想力」
「学力」「プレゼン力」が大切だと説く。2は「恐竜と鳥類とほ乳類」の項。
「恐竜の羽毛の色は何色?」などもあり近年は電子顕微鏡などの機器でたく
さんの粒々が見られる。それで恐竜化石の色素を調べられるようになった
など研究の面白さも伝わってくる。「哺乳類の祖先はまるでトカゲ!」という。
系統樹をさかのぼっていくと恐竜を通りすぎて爬虫類にたどりつくらしい。
「恐竜の子育て」では、恐竜の卵が親の体温で温めていたことがわかったと
か。この項では恐類、ほ乳類の進化の過程がたくさん述べられている。3は
「アウト・オブ・チベット説」で、著者自身が発掘にも加わったチベットの
化石についてたくさん書かれている。チベット高原はインド大陸がアジア大
陸に衝突して盛り上がった台地。チベット高原、ヒマラヤ高地は「第3の極地」
と称するほど特異な景観を示している。当然そこに棲んでいた動物も特異だ。
その秘境の化石採集に著者は参加した発掘記がリアルに記されている。「サイ
の頭骨を発見!」では、石膏でくるむと大人4人で抱えるようなチベットケサ
イの化石も見つかった。これは新種化石だった。その他、チベットユキヒョウ
化石発見の話や、サンタギツネ化石などチベット特有の動物化石の話が続く。
2024年8月 1,450円
新刊紹介