私好みの新刊 20252

『日本にいたゾウ』大島英太郎/文・絵 

たくさんのふしぎ202412月号 福音館書店 810

日本にもゾウがいたという話と簡単なゾウの進化の様子も書かれている。まず、

最初のページをくると埼玉県・入間川川原で見つかったゾウの足跡化石の話が出

てくる。これは関西でも、大阪府の石川や滋賀県の野洲川などでも見つかっている。

かつて、日本にもゾウがいたことは確かだ。今の動物園にいるゾウの話があって、

1900万年前から日本にいた古いゾウの話が出てくる。日本はアジア大陸とつながっ

ていた時代があったが、その後、日本列島が大陸から離れて開くようになった。

そのころ約400万年前頃、日本にはミエゾウという大型のゾウがいた。当時の日本

は亜熱帯気候で今より気温は高く、大型のシカやワニなどもい生きていた。やがて

200万年ほど前になると日本の気候もだんだん寒くなって小型のアケボノゾウが現

れた。島で生きるようになったゾウはだんだんと小型化していく。約60万年前にな

ると、マチカネワニ(豊中市の待兼山で化石が見つかった。)も出てくる。さらに時

代は進んで、約34万年ほど前になるとナウマンゾウが現れた。とても寒い時代だった。

ナウマンゾウの化石は、長野県の野尻湖畔での発掘が有名になった。専門家や市民の

化石愛好家など交えた大掛りの発掘だった。そこではゾウの化石のほかゾウ解体に使

った骨片などが出てきて、当時すでに人間が住んでいたことが明らかになった。3

8000年ぐらい前だった。また約2万年ほど前には、大陸とつながっていた北海道では

マンモスも生息していた。さらに寒くなってくると耳の小さいマンモスも現れ、ヘラ

ジカ、ヒグマなども北海道にやって来た。その後、日本もだんだん暖かくなり氷河時

代の大型動物は生き残れなくなった。ヒグマやユキウサギなどはは生き続け、ライチ

ョウなどは高山で生き残った。最後にゾウの進化の歴史が書かれている。最初、ゾウの

祖先は水中にいたとか。日本でのゾウの生息のようすが年をおって読み取れる。

               

『日本列島はすごい』 伊藤孝/(中公新書) 中央公論新社 20244月刊 920

  日本列島はご存知のように縦に細長い列島の国である。そのことが幸いして気候も変

化に富んでいる。この日本列島に人類のあとが見られるようになったのは約4万年前とい

う。この列島で生活していくのには様々な資源が必要でる。それらの資源をどこで得てき

たのか、どのように利用してきたかが興味深く語られている。文体もやさしく中・高校生

くらいから読める。

 まず初めに、日本列島の地質的な成り立ちについて述べられている。そのまえに「なぜ

地球には陸と海」があるのかの話もあって、大陸に引っ付いていた日本列島はプレートの

付加作用やマグマから出来た火成作用によって成り立っていることが述べられている。そ

の後やがて日本列島はだんだん大陸から離れていき今の形になった経緯が芭蕉の旅にな

ぞらえて述べられている。もう一つ、日本列島の特徴は「火山列島」であることである。

日本列島に火山・温泉が多く存在する理由も書かれている。転じて、気候の話に進む。日

本列島にはなぜ西風が吹きやすいのか等、地球規模の話が展開される。

 次に、ページをかざるのは、日本列島にある数々の資源について。まず、周りを海に囲

まれた日本で昔から取られていたのは「塩」である。「海の水はなぜ塩辛いのか」の話か

ら各地の「塩」について地球規模の話で岩塩の話も出る。日本列島の「塩作り」にも言及

している。次に列島の燃料について。日本列島は森林の国とも言われている。昔から人々

は森林から燃料を得ていた経緯が述べられている。つぎに、人々が燃料に使いだしたのは

石炭・石油について。次には、鉄や鉱物資源、そして最後は砂金など金資源について、原

金鉱山の菱刈鉱山の話もある。最後に、日本列島の特徴である火山灰土について語り締め

くくっている。日本列島の特徴が地質的、資源的側面から読み取れる。