私好みの新刊 20262

『歩くサナギ、うんちの繭』 篠原かをり著 大和書房  

 昆虫類は「変態」という成長過程を通り過ぎることはよく知られている。

卵−幼虫−、さなぎの時期を経て成虫と変化する。これは昆虫類の特徴と

してごくあたりまえに認識されているのが、それを著者は昆虫類の変態は

「謎たらけの魅惑の世界」という。この本に取り上げられているのはその

魅惑の世界の数々。昆虫の世界が「驚くべき世界に満ちていること」が各

所で紹介されている。

思えば動物は、子どもから大人に成長する過程ではあまり姿は変化しないの

が普通である。ところが、昆虫類の多くはは変態という過程を経由する。特に

「さなぎ」は今までの姿形も消えてどろどろの状態になる。それがどうして再

び幼虫の姿になって現れるのか不思議と言えば不思議である。さらに成虫は今

までの姿とぜんぜん違った姿になる。これは改めて思えば不思議である。昆虫

類はそういう不思議な世界を生きていると著者は言う。この本はそうした昆虫

類の変態の不思議な世界がたくさん紹介されている。

 まず初めに「昆虫に変態が必要なわけ」が出てくる。あたりまえ過ぎて考え事

もなかった。その理由はまず「成虫と幼虫の住み分け」とある。そうか。昆虫に

は食性がある。どの植物でも食べてるわけではない。またその葉をうまく見つけ

て卵を産む。成虫になるとこんどは花の蜜を吸う。サナギ時期は何も食べない。

サナギは「大規模な身体化改造」の時期だとか。ちゃんとその種のDNAが含まれ

ているのだろうか。完全変態しない昆虫もいるキブリなどより原始的な昆虫類だ。

3億年前からいる昆虫だが約1億年前から進化の過程で変態の術を獲得したとか

。昆虫類が繁栄するための大変革である。

以下、各昆虫類の多様な変態模様がたくさん書かれている。文章も平易で小学生

高学年なら読んで楽しめる。           20253月 1,600円 

 

『土と生命の46億年史』 藤井一至著  KODANSHA

 はじめに「人類繁栄のカギは土にある」と書かれている。なるほど。土が元で土

壌が生まれ生物も人類も生きている。まさに土があるからこそ生命も芽生え人類も

繁栄してきた。最初のカラーページを見ると土はどの岩石から生まれてきたか、人

類の繁栄は土にあることががよくわかる。約5億年前に土がうまれ、地衣類が生まれ

、シダ植物が生まれ、針葉樹が生まれ、・・と今に至っている。

本文では、まず「土と葉なにか、粘土とははにか」が論じられ、その中でケイ素

の重要性を指摘している。もちろん酸素、アルミニウム、マグネシウムなどの元素

も加わり土を作っているという。やがて粘土と砂は生物の棲み家になり、土壌が生

まれ、多様な生命の進化をもたらした。それには最初に菌類(菌根菌)の働きがあり

コケ類が生まれだんだんとやがて大きな植物を生むことになる。こうして土壌はま

すます多様化し動物群が登場してくる。約20億年前になると大陸面積は大きく伸び

てくる。動物は塩分を含む海水を適度に利用し「海はいのちのふるさと」として海

水を体内にとりこむ。こうして、動物の陸上進出を可能になった。地球上ではプレ

ートが生まれ物質循環のサイクルができてきた。その循環の中で、ことさら大切な

のはリンの存在だった。「リンは遺伝子やエネルギーの生産に欠かせない」として

リンの存在を強調している。りんは動物の体の元を作る物質である。

土はただそこにあるだけでなしに微生物との深い関りがあ。まさに土は生きている。

その土を人類がいかに操るかが人間に問われている。後半は、各地のいろいろな土

の様子とその土と人類がいかに関わっているかくわしく論じている。「46億年の歴史

は、土こそ私たちの生命と文明を生み出した基礎であること、ミミズを手本にしなけ

れば科学文明も持続的たりえないことを教えてくれている。」と結んでいる。

202412月 1,200円 

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