「はじめに」より 「科学読み物など,たかが子どもの本ではないか」と思われるかも知れない。しかし,けっしてそうではない。一般の普及書は専門性を高めるために記載も細かく記述的になっていることが多い。その点,子どもを対象に書かれた科学読み物は,読みやすい文章と視野の広い町珊観が根底にある。ゆったりとコーヒーでも飲みながら、一冊の科学読み物を手に取ってみられると,新たな感動にふれることと思う。そして,その感動を子どもたちと共有できれば,さらに楽しさが増してくる。 「すぐれた科学読み物を読むといっても,いい本がいつも書店で見つからないではないか」と言われるかも知れない。しかし,今は幸いなことにインターネットでほとんどの本が簡単に手に入る。また,多くの図書館では予約サービスや転送サービスで本を用意してくれるありがたい時代になった。本を手にできる環境は一昔前よりはるかに良くなった。図書館などをおおいに活用されて,科学読み物に日を向けられてはどうだろう。 この本では,動植物,物理・化学,地球といった個々の自然分野の (解説を主とした本)はあまり取り上げていない。それらは,個々の興味と関心で検索してもらうと良い。書店にも,自然分野の解説を主とした本は多く並べられている。 本書では,できるだけ,自然や社会を広く見渡せる本を選んだ。私たちが自然に近づく第一歩は,細かな知識を得ることではなく,自然や社会の様々なしくみや背景を知ることである。そして,今までにこの自然界をひもといてきた先人の知恵を知ることではないだろうか。それらを少しでも感動的に分かりやすく書かれた本をここでは紹介した。 (1)「自然を感じる本」(小学校低学年から読み進められ、自然を感じる本 (2)「自然・社会を楽しむ本」(自然や社会のしくみが楽しめる本) (3)「科学を楽しむ本」(自然や社会を解き明かす過程が読み取れる本 ここで紹介した本の多くは「自然・社会を楽しむ本」に入っているが,できることなら「科学を楽しむ本」(科学の本)の一つは見て欲しい。科学的なものの見方がさらにわかってもらえるものと思う。 「仮説実験授業」という科学教育を提唱した板倉聖宣氏は(科学の読み物)について 科学者という人間がいて初めて科学が成立します。ですから,科学読み物というのは人間の物語なのです。自然の物語ではないのです。(『科学読物研究』〇号 科学読物研究事務局発行)と述べている。科学読み物というと何か自然の姿を記した本,実験の方法を書いた理科の本などと思われがちだが,本来は〈人間が創造した物語〉なのである。 〈人間の物語〉を感じる本として〈科学読み物〉を手にとってみられるとどうだろうか。 2009年1月 西村 寿雄 |
目 次 T 自然を楽しむ本 U 自然・社会を楽しむ本 @植物の本 A虫の本 B野鳥の本 C動物・魚の本 Dヒト・命の本 E地球・化石・古生物の本 F宇宙・星の本 G物理・化学・発明の本 H算数・数学本 I自然観察の本 J科学あそび・自由研究の本 K図鑑 L人と自然の本 M社会のしくみの本 V 科学を楽しむ本 @自然の科学の本 A科学の科学の本 お薦め科学読み物リスト |