仮説実験授業夏の大会資料
広島

2003年7月
宮島口・安芸グランドホテル・発表資料

           [分科会]  科学読み物

    提出レポート

1. 読み物「はがきくぐりぬけの算数」   6p 愛知・松崎重広(資料発表)

2. 読み物「日にちの読み方のなぞとき」  4p 愛知・松崎重広(資料発表)

3. 資料「科学の碑記念会館に見る 昭和初期の科学読み物に関する調査」

      資料付き           63p 群馬・森下知昭

4. 読み物「たたいて磁石」       12p  長野・北村秀夫

5. 読み物「太陽は何からできているか」  6p  栃木・湯沢光男 

6. 読み物「レオナルドさんの化石研究物語」7p  大阪・西村寿雄

会場レポート

科学読み物分科会は、毎年それほど人数が集まらないので、今年も、場合によっては数人かと予想していた。分科会設定が3日目になったこともあって、今年は60人以上の参加者で、部屋からあふれるほどの盛況であった。

初め、資料発表として出された松崎重広さんの算数読み物を二点読みあった。いずれも、算数読み物として楽しく読みあえた。最初の「はがきくぐりぬけの算数」は、ハガキをうんと細く切って、つまり、限りなく幅のない直線として切り込んで、輪をつくり、その中に何人ぐらい人が入れるかという予想問題から入る。小学生の〈裕子〉さんが学校で学んだことを、家族のみんなでやってみるという構成で楽しく読めた。「もしも、原子の幅でハガキを切ったと計算したら、どのぐらいのモノが入るか話として書くとおもしろいのでは」という意見もあった。

次の「日にちの読み方のなぞとき」たけし君が学校で習ったことを家族に話すという構成で、一、二、三、…(いち、に、さん、…)という中国の読み方と、一、二、三、…(ひい、ふう、みい、…)という日本の読み方の違いを題材にした話である。中国文化との関連も垣間見られる楽しいお話になっている。

 三つ目は森下知昭さんの「昭和初期の科学読み物に関する調査」で、昭和17,18年頃の科学読み物の前書きにある年号の書き方を調べたレポートである。戦時体制に入っていく時代に西暦表記にするか、昭和表記にするか、或いは紀元(皇紀)表記にするか、著者の思いを知ることが出来る。科学の碑会館にある科学読み物の膨大な資料も付随されている。最も子ども向けの本と思われる竹内時雄著『発明発見物語』の〈はしがき〉に、「紀元二千六百年明治節の佳き日に」なんて書かれていた。当時では著名な原田三夫や富塚清も一部〈皇紀〉を採用している。

 四つ目は北村秀夫さんの「たたいて磁石」。これは、昨年の大会でいろいろ実験を交えて発表されたものが元で、その後のいくつかの研究会で、板倉聖宣先生をはじめみなさんからキビシイ意見も出されたものです。それにもめげず、今回お話を中心にまとめて持ってきてくれました。

 はじめの磁石の説明の部分で少し堅苦しい印象を受けましたが、中程からの、たたいて磁石にする研究経過の話はとてもおもしろく、みなさんにも好評でした。少し、問いかけを入れるとか、図をはさむと、完成するのではないかなと思われます。あとで、みなさんに、ゼムクリップをたたいて磁石になる実験を楽しんでもらいました。

五つ目は湯沢光男さんの「太陽は何からできているか」という「〜規模雄大な計算の話〜」です。これは、授業書〈光と原子〉第2部の導入の話として試案されたものです。長い長い間、絶え間なく地球に熱や光を送り続けている太陽が、いったい何で出来ているのかは、ずっと、人々(科学者)の関心の的だったにちがいないでしょう。それが、いつ、だれによって、どのようにして今の考えにたどりついたかは、大変興味のある話題です。ある学者が「太陽は石油でできている」と考えたことについて、それこそ、規模雄大に計算して、その誤りを指摘した話です。

その後、どのようなことから、太陽は原子核反応であることに科学者は気づいていったかも、知りたいという意見もありました。こういう内容もさらりと話として入るといいなと思いました。

最後に、西村寿雄の「レオナルドさんの化石研究物語」です。これは、カブリエル・ゴオー著『地球物語』(1949)を、今風に西村が意訳したものです。これは、文明開化の時期になって、絵画を初め、機械、建築、土木とあらゆる分野にたけていたレオナルド・だ・ビンチの化石研究物語です。もともと、土木技師でしたから、地層の様子を観察してダ・ビンチは早くから地層の変動に気づいていました。そして、山中の地層から見つかる貝化石も、かつての海の底で出来たものであることを主張し始めました。

ガリレオなどと同様に、身の危険もある中で「化石が神の創造物ではない」と言いはったレオナルド・ダ・ビンチの観察力のすばらしさに感動します。
 ほとんどの人は最後まで、聞き入っておられました。

                                                                                             文責 西村寿雄 

         

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