四条畷市薬尾寺池改修工事

                  自然保護団体の要請で自然に易しい工事にはなったが…

           
    1997年1月  改築前  2000年2月 堤  ふとん籠工法  2000年2月 堰堤 石積み籠工法
           2001年4月      堤    2001年4月     堰堤   2001年4月



                     改修前の薬尾池

 四条畷市下田原地区にあるこの薬尾寺池は、近くにある堂尾池と並ぶ小さなため池です。このうち堂尾池はすでに改修工事も終わりコンクリートの護岸が延々と続く今風の池に変貌していました。これと比べて、この薬尾寺池は、つい最近までは、唯一自然の状態を残してひっそりと静かにたたずむ池でした。季節に応じてスミレやショウジョウバカマ、チゴユリ、ワレモコウなどの植物が咲きほこり、数々のトンボが飛び交う生き物いっぱいの池でした。             
 その池の進入路にある日突然工事の車が出入りするようになり、この池の改修工事が始まりました。雑木林に覆われた野鳥の楽園がみるみる拡張され、見るも無惨な改修工事の始まりです。これを知った近くの自然愛好家がさっそく工事担当者の「大阪府農と緑の総合事務所」にかけあいました。大阪自然環境保全協会や北河内自然愛好会も、団体としてこの工事の概要について説明を求め、多自然型の工事に変更するよう要望しました。                                        
 この池は古くからの灌漑用ため池で、堰堤は砂だけの土盛りで造られていてすでに各所から水漏れがあり危険な状態になっていましたので、工事そのものは仕方のないことです。そこで、この総合事務所に自然の生態系復元可能な多自然型工法についてそれぞれ提言しました。これについては、当事務所も耳を傾け、可能な限り要望を聞く姿勢でいました。何度か、当事務所の職員立ち会いで工法の具体的な要望も行われました。                                                    

                  

                     工事の概要

 昨年から、里山調査などでたびたびこの池を訪れ、みんなで工事を見守っていました。この冬でほぼ池の工事が終わっていました。                                        その結果を見ると、池周辺の護岸工法にはぐり石をつめたふとん籠やじゃ籠が使われ、一応、生き物が生息しやすい工法を取っています。また、前面の堰堤部分(池側)は、当初の張ブロック工法から、大きな石を組んだ石張工法に変更になっていました。さらに、堰堤部分の外側斜面は当初の張ブロック工法から張芝工法に変更になっていました。これらは今まで見るコンクリートブロック張り合わせ工法とは大きく異なります。これだけでも、生物の生息にはかなりの成果です。                                            
 ただ、堰堤部分外側斜面は雨水による浸食が受けやすく、草本が生育するまでの応急的な砂防工事が必要です。
このままでは、かなり土砂が流されてしまうでしょう。                                                                                  この池そのものの工事については、自然環境保全の観点から見ても一定の評価はできると思われます。しかし、異様に変貌してしまったのは、この池に通じる進入路です。一度、みなさん、足を運んでください。ここまで大がかりな工事が必要だったのか。必要以上に削り取られた山肌に従来通りの平面コンクリート張りの護岸です。これでは小動物の通行もママなりません。草本類もすぐには生える環境にありません。                             この場所周辺で大阪府は、ビオトープ事業を計画しているといいます。それなら、なぜ壊す前にもっと慎重にみんなの知恵を集めなかったのか悔やまれます。今更、ビオトープ計画などと称しても付け焼き刃にしかうつりません。この状態から生き物が棲める自然環境を復元するには、それなりの護岸工事や植物生育環境の保全など相当の経費をつぎ込む必要があると思われます。                                                     


                                            「ホタルと里山保全」へ