頭の体操(本の紹介)
 小町算
花の色はうつりにけりないたずらに
わが身世にふるながめせしまに
───小野小町『百人一首』より───

 小野小町は、わかいころ、絶世の美女として世の人にもてはや
されていました。とくに小町にむちゅうだったのは、深草少将でし
た。しかし、小町は、自分に恋する人にひどく冷淡でした。
 小町は、深草少将に、自分のもとに100夜つづけて通ってくる
なら結婚してあげようと言いました。深草少将は、雨の日も風の
日も小町のもとに通いました。小町はちっとも本気ではありませ
んでしたのに。
 そうとは知らぬ深草少将は、99夜通いつめ、あと1夜というそ
の日に、急にむねが苦しくなり、そのまま死んでしまったのです。
 今は老いさらばえて友もなく1人ぼっちの小町は、しみじみと
深草少将を思い出します。
 「あの人は、ひと夜、ふた夜、三夜、四夜、五夜、六夜、七夜、
八夜、九夜と通ってきて、とうとう九十九夜になったのだったわ」
 そうして、1、2、3、4、5、6、7、8、9という9つの数を、その順
序をくずさないで、たしたり、ひいたり、かけたり、わったりして、
99になる計算を考え始めました。
「1+2−3+4×6−7+8×9=99……できたわ」
 そして、また思います。「あの人は、あと九夜、あと八夜、あと七夜
…あと三夜、あとふた夜、あとひと夜と思いつづけて、九十九夜にな
ったときになくなったのだわ」そして、こんどは、9、8、7、6、5、4、3、
2、1の順に数をならべたまま、たしたり、ひいたり、かけたり、わつた
りして、99になる計算を考え始めました。
「9×8+7×6−5−4−3−2−1=99……できたわ」
 小町のやった以外にも、1、2、3、4、5、6、7、8、9(あるいは9、8、
7、6、5、4、3、2、1)の数の順はくずさずに、たしたり、ひいたり、かけ
たり、わったりして、99になる計算はあるでしょうか。
 ( )を使ってもかまいませんから、さがしてみてください。

「小町算と布ぬすっと算」山崎直美著、さ・え・ら書房刊よりの紹介です。
 本そのものは絶版になっているかもしれませんが、興味があれば、
図書館などで実物をご覧下さい。とてもおもしろい本です。