6 1994年3月号
枚方市敬老金支給事業廃止の波紋

これからの福祉は自立の時代 高齢者は社会的弱者でない

 枚方市は昭和34年から毎年敬老の日にお年寄りに敬老金(70〜79歳まで7,500円80歳以上10,000円)を
支給してきました。
昨年は約2万人に1億7000万円を支給しましたが、枚方市の試算では2000年で2億5683万円、2020年で
6億7184万円と高齢者の急激な伸びで財政も大幅な増加になるため今年で取りやめることになりました。
今後は70歳(古希)、77歳(喜寿)、88歳(米寿)、99歳(白寿)の時に敬老の意を表す記念品を贈呈することにし、
財源を高齢者保健福祉計画の要援護老人や生きがい対策費に回すようにしましたが、朝日新聞が
取り上げたり共産党が反対するなど論議をよんでいます。

お金の支給だけが福祉でない
 福祉の対象者は社会的弱者といわれる高齢者、障害者、母子家庭、年金生活者、低所得者などです。
社会的弱者即経済的弱者として生活扶助することが福祉といわれてきましたが社会福祉の視点は
10年単位で大きく変わってきています。
敬老金制度が誕生した昭和34年はモノの欠乏の時代。
それなりに意義のあった制度でした。
それから35年、生活すべてがお金さえ出せば満ち足りる社会に、行政までがお金を与えるだけの事業に
満足していいものでしょうか。
総理府の家計調査(平成4年)によれば高齢無職世帯の一人当たり消費支出は月10万円、現役標準世帯の
一人当たり8万6000円を上回っており、高齢者すべてが社会的弱者という発想はよくありません。

選択の福祉へ転換
 したがって、枚方市が敬老金支給の廃止に伴い、24時間在宅ケア体制や緊急通報センターの多機能
高齢者福祉拠点施設の新設、高齢者生きがい創造学園や介護者リフレッシュ制度の創設等の新規事業の
積極的な取り組みは、与える福祉から選択の福祉への転換で財源を振り向けたことは評価できます。
敬老金を生活の糧にしておられる年金、低所得者の方には生活扶助の視点で手厚くすることで解決します。
 これからの社会福祉は経済的な貧しさを救済した発想から、社会で自立出来るシステムづくりが
大切です。
行政が積極的にモノの豊かさより心の豊かさを提供しなければならない時代です。



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