20 1995年9月号
木津信用組合の破綻

生き抜くための再編成を促進 早急な金融システムの確立を

 今年の2月の東京協和、安全の2信用組合、7月のコスモ信用組合破綻。
そして木津信用組合が8月30日業務停止命令を受けました。
いずれもバプル経済時の土地転がしの過剰な融資が原因で、特に府下信用組合の不動産業貸出は
全国平均約16%に比べ約24%と突出。
つまりバプル崩壊で地価が急落し利息元本が焦げ付き、しかも金融自由化によって資金調達原価率が
上昇、経営が破綻しました。
信用組合は、昭和24年に不特定多数を相手にする株式会社組織銀行と違い、特定地域の中小企業・
個人の相互扶助組織としてできました。
協同組織金融機関には信用金庫、労働金庫、農協がありますが、大阪府がなぜ信組を検査指導するかと
いうと「中小企業等協同組合法」「協同組合による金融事業に関する法律」により大蔵大臣から機関委任を
うけているからです。

府と国の行政責任
「巨額の不良債権を抱え、早くから経営不安のうわさが絶えなかった木津信組を今までなぜ放置して
きたのか」、「破綻直前まで派手なCMを流していた」、「店舗開設の許認可を認めたのは府の責任では
ないか」、「20%以内と制限されている会員外の預金は違反だ」など府の監督責任を問う声が府民の
方々から数多く頂きました。
府は平成2年10月から大蔵省と合同で定期検査を実施、木津信組に対し不良債権等の乱脈経営の
是正を指導してきたが結局、改善されず破綻を迎えました。
実態をつかみながら改善できなかった府の指導・監督の責任は当然あります。
ところが府は業務停止命令までが責任と言ってるのに対し、大蔵省は平成7年6月8日、「破綻処理に
ついても監督責任を有する都道府県が当たる」としましたが、大阪府民信組問題処理の
平成5年9月22日には「破綻した信用組合への財政支援による救済責任までは及ばない」の見解文書を
公表しており国の監督責任の見解が曖昧です。
国・府で監督責任の綱引きをせず、早急に預金保険機構法の見直しや不良債権処理など、破綻処理
金融システムを整備しなければなりません。
当面の対策として、破綻処理のスキーム(枠組み)づくりを急ぐこと。約6000億円と見られる損失額を
早く確定さし、負担責任は預金保険機構、信組業界、日銀、特に木津信組の破綻原因となったと
いわれる紹介預金をした都市銀行の資金支援で賄うべきで国との責任が明確でない限り府の財源を
使うことに疑義があります。

経営の情報公開を
 今後、金融機関は自主的にペイオフ(1000万円以上の預金は切り捨て)や経営情報、資産内容(ディスク
ロージャー)を公開して預金者に不信感をぬぐうことです。
預金者に金融機関の選択の判断材料を与えることは預金者の自己責任原則をはかることにもなります。
 協同組合が設置された時代から大きくニーズが変わって来ています。
業績が悪いから吸収する発想でなく金融自由化の嵐の中で、生き抜くために積極的に地域の
金融機関として相互補完効果のある信組同士や信用金庫、都市・地方銀行との再編を模索するべきです。
 第2の木津信組問題がでないように国や府は経営悪化の信組が自助努力によって再生が可能かどうか
見極め、職域・業域組合は別としても地域組合は一般金融機関として再編成を促進する必要があります。



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